おうじさまのさがしもの


ネックレスを拾いました。
某テレビ局の裏の駐車場で…。
如何見ても華奢で、女性物の様です。
私はただ、ママを待っていたんですが(私のママは番組構成企画…の様な物の担当らしいのです)、出入口から約3メートル当たりの所で見付けたのです。
小さな小さな小瓶の様なトップの中に、更に小さな紙が丸められて入れてある代物です。
素直に可愛い!!と見た瞬間一目惚れを覚えたのですが…。
こんなに可愛いネックレスならば、もしかしたら無くして困っているだろう!!と変に勘違いにも似た思い込みをして、早くも一週間です。
ただ、ひたすら待っています。


ママを待っている時間だけですが、それまでは一定時間ただ、ぼんやりと立っています。
毎日休みなく働くママにお弁当、デザートを毎日届けに行っている為、様々な料理が得意になりました。
これで一人暮らしもバッチリです。




「諦め切れたらなぁ…」




不意に背後で男性の声…。
私は慌てて車の陰に隠れてみたのですが、ちらりとその男性の声が来になり、顔だけひょっこり出してみました。
するとバッチリと目線が合い、あわあわと心境は慌ただしく、如何仕様!?と頭を抱えたのですが…。




「君さー…毎日この時間帯にいるツインテールの子っスよね?」


「ええ、まぁ……います」


「隠れてないで出ておいで。何も取って食おうとか思ってないっスから」


「いや、テレビの方に……」


「ちゃんと人間スよ?オレ。ぁ…じゃあ、そこにいるなら聞いて欲しいっス」


「聞く?ぁ、はい。聞きます」


「すっごいきょどってるね。大丈夫?まぁ、大丈夫か。

あのさぁ、ネックレス知らないっスか?落としたとしたら此処の筈なんだよね。諦め切れたら良いんスけど、ちょっと無理かなぁって。大事な物だったからさ」




私は声だけ聞き取り、怖くて車の影に隠れていました。
すると不意に肩に手が掛けられたので、慌てて飛び上がるとニッコリ笑った男性の顔が…ありました。
数歩後ろへ後退し、バックを抱き締めてあわあわと慌ててしまいます。




「俺、黄瀬。君は?」


「…***です」


「下の名前は?」


「xxxです…」


「名前で呼びたいから、xxxちゃんスね。了解。ところでさ、一つ訊きたいんスけど」


「…はい」


「ネックレス、本当に知らないっスか?どっちかと言うと女物のヤツ。大事だったんだけど、うっかり落としちゃって…」


「ネックレス…」


「落とした日から結構日にち経ってるから、もう出て来ないだろうけど…大事だったんスよね」




もしかすると、もしかするかも知れない。
私はバッグを探り、小さな袋に大事に仕舞っていたネックレスを苦笑する彼に広げてみました。
すると彼はほんのり笑い、受け取りました。




「やっぱり、拾ってくれてたんスね」


「ぇ……?」


「xxxちゃんにあげるよ。逆パターン、シンデレラの靴みたいじゃないっスか?」


「でも、大事って…」


「大事な物だから、xxxちゃんにあげるんスよ。意味は好きな様に取って良いし」


「黄瀬さん、の大事な物…。え、ぁ…あの…」


「そんな慌てなくても、ゆっくり考えて良いっスよ。明日、も一度此処で。


じゃあね、xxxちゃん」


「…はい…」




吃驚しました…。
テレビの中の人が話し掛けてくれるとは思いませんでした。
ネックレスを抱き締めて、素敵な人にプレゼントとして貰えるとは…。




「恋、してしまったかも…私…」



頬が火照り、少しばかり体温が上がりそうです。




fin…xxx




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