夜明け前は真っ暗だ/狩人 | ナノ


ジューイチ…イルミ side.…


突然「預かって欲しい"モノ"がある」と電話が入り、こちらの返事も聞かずに指定の場所だけ告げると切られた。
面倒だなぁ…とぼんやりと思ったが、仕事が一件入り込んでいて、帰路にその住所がたまたまあった為、ついでに寄ってみたまでだった。
メイクを落として仕舞った奴は俺が入り込むと「お疲れ」なんてミネラルウォーターを投げて来た。
投げられた方向など見ずに受け取ると蓋を開ける。




「無理だよ。物じゃないじゃない」


「モノだよ。ただの小さな女の子。因みにただの一般人。物と大差ないだろう」


「嫌だって」


「頼むよ。彼女を一人にさせてても構わないんだけど、逃げそうなんだよね」


「一体どんな価値があるのさ。あれだろ?下でずぶ濡れになってる」


「そうそう。からかっただけなんだけど、余りに必死な形相でねぇ。本気にしちゃって」


「面倒だなぁ」




クツクツと笑う奴はベランダから覗き込む。
シャツ位羽織ったら如何なのだろう。
俺は真下を眺めながら、来る途中で邪魔だった女を見付けた。
物ではなく動く物体だなんて聞いていないが、さも面白いと言わんばかりに笑う奴…ヒソカの顔は気持ち悪い。




「何したの」


「指輪を投げた"振り"をしてみただけさ」


「ふーん」


「あーあ、ずぶ濡れで泣いてる。本当に泣くのが好きなコだよねぇ。


此処にあるのにさ。あんな必死になっちゃって」


「悪趣味だね」


「君も変わりないだろう」


「俺はしないよ。面倒だ」


「まぁ、そんな事だから頼むよ。君の部屋広いから人間一人置いたって大丈夫だろう?」


「ハァ…金はヒソカ、お前持ちだからね」


「ああ、勿論」




にっこりなんて擬音が付きそうな笑顔に悪態を吐き、一つだけ溜息を吐いた。
ミネラルウォーターをテーブルに置くとドサリとソファーに腰掛けて、差し出されたタオルを受け取るとシャツを羽織ったヒソカは迎えに行って来る、だなんて言って部屋を出て行った。




「泣いてたんだ…」



ふーん…
雨で気付かなかった


俺は頭を下げた女を思い出しながら濡れた肩をタオルで拭った。




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