夜明け前は真っ暗だ/狩人 | ナノ


02…U side.…


大きな揺れだったろうか。
縦揺れ型の揺れだったに違いない。
私はそおっと固く閉ざしていた瞼をうっすらと開いた。
黒光の瓦礫、いや煉瓦が目を占めた。
一度瞬きをすると、もう一度パチパチと数回早く瞬きを繰り返した。
コンタクトの為、少し乾いたのだろう、痛みがある。
手探りでバッグからいつもの場所をあさぐり、目薬を捜し当てて空を仰ぐ様にして注した。
そしてまた数回瞬き。




「幾ら私がはしゃぎ過ぎて疲れていたからって、幻覚幻聴はなかったのだけれど…。新しい症状?まさか。


如何見ても新幹線では、ないわよね。…うたた寝、でもない。


つまりは私は本当に頭が如何にかなったという訳かしら。…携帯、圏外…」




荷物は全てある様だ。
だが、私は地面にそのまま座り込んでいて、荷物は周囲にきちんとある。
取り敢えず、深呼吸。
膝を抱えて暫く呼吸だけに集中。
本当は背筋を伸ばしてゆっくりすべきものだが、景色にも驚いていた為、孤独がじわじわ追い込んで来るものだから、私は膝を抱えて瞼を閉じた。


すると耳をつんざく様な悲鳴が聴こえた為に、私は更に膝を抱えて仕舞った。
反射的にだった。


ポタ……、


と膝を抱えていた腕に液体が降って来た様だ。
すると瞬間、頭にも何かの液体が降り掛かった事を知った瞬間、突然の雨かと頭を上げて仕舞った。


上げて仕舞ったのだ。




「………っ、……ぁ……」




がつん、と頭を鈍器で殴られた様だった。
目前が揺らぎ、絞り出したい声もままならず、呼吸も厳しくなって来た。
私は驚愕しているのだ。
雨だと思った液体は、鮮明な赤い液体だったのだ。


それが血液だと自覚するのに数秒といらなかった。
噎せる様な臭いがしたからだ。
どれだけ戻しても胃酸だけがこみ上がるだろう。
直ぐに気付いて仕舞ったのは、私が自分で自傷を行った時の血液の臭いと同じだったからだ。
それが、まさか…降って来るだなんて…。




「おや…赤が似合うなんて素敵だねぇ」


「………」


「君、家出?出稼ぎ?」


「…………どちら様でしょうか…」




見上げたが最期、私は一生を通してこんな生活を送らねばならないかも知れないと、腹を括るしかなかった。



Fin…xxx
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