夜明け前は真っ暗だ/狩人 | ナノ


ジューニ…ヒソカ side.…


不思議な女の子を拾った。
拾った、という表現は可笑しいが、ターゲットの血を殺した事により、君を見事に血塗れにさせて仕舞い、少ーしだけ罪悪感と呼べる感情が芽生え、手を出した。
見た目は17、8辺りかと思いきや24だとか…ややもすると僕より年上という事になるが、如何見ても童顔でそんな風には思えない。
たった一行の文章や問題が解けないだけで必死になり泣き出す始末。
何かあれば怯えた様にして「すみません」と頭を下げて仕舞う。


何時に帰るか判らない僕をひたすら待ち、深夜や朝方だろうが起きていては必ず「お帰りなさい」と微笑む様な一面も持ち、温かい食事が必ずある。
からかいついでに3日あけて帰宅した時でさえ一睡もせずに待ってくれていた時があった。
勿論、食事も三日間違う物を用意していたらしい。
ダストボックスに捨てられた食事が物語っていた。
流石にその行動には理解が追い付かず、笑って仕舞ったが…。




「雨だよ」


「…知ってます」


「たかが指輪じゃないか。そんなに欲しいなら次に買ってあげるよ」


「っ……あれは!あれは…ただの指輪ではないんです。他人にとってはたかが指輪でも、私にとっては大切な婚約指輪なんです。


光君が2ケ月デザインを考えてくれた、大切で大事な指輪なんです。忙しいにも関わらず、考えてくれた物なんです…。


同じ物は二つとないんです。


だから……。


…ヒソカさんには関係ありませんね。戻っていても構いません。放っといて下さい」


「…怒らないのかい?」


「ヒソカさんに怒りをぶつけるよりも探すのが先ですから。ぶつける時間があるならば探す時間の方が大事ですもの。ただ…顔は見たくありません」


「でもずぶ濡れだよ」


「だから大丈夫です」


「泣き過ぎて前、見えてないんじゃない?」


「っ、喧嘩売りに来たんですか?」


「見て御覧よ。コレだろう」


「っ!………如何して…」


「投げる振りをしただけさ。さも本気になるもんだから面し


パシ…ン-----っ!


…痛いなぁ、xxx」


「…最低…!返して!!お願いですから、返して!!私の指輪っ」


「言う事聞くならね」


「何だってするわ!!だから…返して…私の……っ、く…お願いだから…っ…ふ……」




右手を広げ、指輪を見せた途端…左頬に小さな掌が打ち付けられた。
痛みも何もなく、赤くなる訳もないが、君が精一杯平手打ちをかましたと見受け、痛がる振りをしてみせた。
カタカタと震え、膝をついて真っ赤に腫れた瞼を更に腫らそうと涙はボロボロと流れている。
僕に腕を伸ばし、土下座までしそうな勢いだ。




「仕方ないなぁ。でも、僕の言う事を聞いてからだ。そしたら傷一つ付けずに返してあげるよ」


「だから!!何でも聞くと言ってるわ。お願いですから…」


「少しの期間、イルミに預かって貰ってくれるかい。君を」


「……いる、み……?」


「そう。僕の数少ない認めている友人なんだけどね。僕が此処を一時空けなくちゃならなくなったんだ。まぁ、ある仕事の為にね。


だから君はイルミの側にいて貰う。迎えには必ず行くから。指輪はその時に返してあげるよ」


「……今…返して下さらないんですか…」


「言う事を聞くと言ったのは君の方だけど?良い大人が取引の話も出来ないのかい?xxx、君は話は判る奴だと思っていたけれど…。


出来ないなら仕方ないな。これは本気で捨てちゃおうか」


「止めて!…聞くわ。聞けば必ず返して下さるのね?必ずっ」


「勿論」


「…判かりました。イルミさんと仰る方の側にいれば、良いんですね…」


「そうそう。聞き分けが良いねぇ」


「………」




未だに止まる事を知らないでいる涙に指先を伸ばす。
深紅の様な瞳は揺れていて、僕を果敢にも睨み付けては腕を払われた。
触らないで、とでも言う様に。




「まぁ良いや。おいで。紹介しなくちゃ」




雨は降り続いている。




fin…xxx

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