夜明け前は真っ暗だ/狩人 | ナノ


10…Uside.…


叫んだと同時だっただろう。

ヒソカさん、彼の手には私の指輪があり、ニィと口角が上がり嘲笑しては指輪を持つ手が綺麗に弧を描く。
明け放していたベランダの窓を突き抜け、一瞬光った様に見えた指輪は私の視界から…消えた。
思い切り彼を押し、掴まれていた腕を振り払うと、指輪を追い掛ける様にベランダに身を乗り出す。
カーテンが僅かに揺れるベランダ。
柵から身を乗り出し、真下を涙目を腕で払い、瞳を凝らした。
だが、投げ捨てられた小さな指輪が見える筈もなく、腕を伸ばしても空を掻くだけだ。


下唇を噛み切る程に噛み締めると、私はベランダから離れ、玄関へと駆け出した。
彼は私の名前を呼ぶが、構ってられない私は裸足のまま飛び出して、エレベーターのキーも指で何度も何度でもカタカタと押しては、早く!と口走る。




「無くなっていたら如何仕様……光君……」




嗚呼、涙が止まらない。
自動ドアさえも億劫で、私は体当たりさながらで外へ飛び出すと目線をベランダへと上げた。

欠けたりしているかも知れない。

周囲を歩き周り、膝をついて街路樹の根本付近を探る。
すると微かに霧がかり、白く私を包み出す。
女心と秋の空、とは良く言ったもので、この世界でも健在なのかと不意に止めた手に思う。




「秋雨、か……」




私はぐぃ、と涙を拭い、気を取り直して街路樹を掻き分けた。
ポツポツと地面を叩き出した雨はローズレッドの5段ティアードのベロアワンピにも染み込み、頬にも流れ出す。
ザアァッ、と次には豪雨となるのもお構いナシに腕を地面は這う。







「ねぇ、邪魔なんだけど」


「っ、ぁ…すみません」




抑揚のない声が頭上から降って来たので、私は咄嗟に立ち上がり道をあけて頭を下げた。
傘一つさしていない人は微かに濡れている様だが、視線を寄せてみると女性にしては低い声だった為に男性なのだとは気付いたのだが、女性顔負けの透き通る様な白い肌に絹糸の様に艶やかな長い黒髪。
大きな深い黒目は感情がまるで感じられない無機質に見詰めて来る。
一瞬ドキリ、として仕舞ったが、大粒の雫が目の前の男性の前髪から落ちた瞬間、私は思い出す。



指輪…!


男性から視線を引き剥がし、もう一度頭を下げると再度、膝を着く。


Fin…xxx

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