「……貴方様が……あの時の…」
「あぁ、そうだ。俺は、あの時に救って貰ったんだよ。お前に」
掘り下げた記憶の先に、同じ髪をした女。
名前を最後の最後で呼ばせてくれた。
日々の過酷な状況下で、大事にしていたのに、俺の記憶は片隅に行き過ぎた。
ケビンに写真を見せられた瞬間、頭痛が走ったのは、無くさずにいた記憶が甦ったからだったのだ。
変わり等、皆無だった。
腰よりもある長い黒髪に、淡い桃色と青いコントラストが混じり、成長した女性となった女は、紛れなくあの時と同じ女。
高くも穏やかな唄うような声音も相変わらずだ。
---外に興味、ですか?
んー……余りないですわね。
私の住む世界は穏やかですし。
貴方はありますの?
---あるとか、無いとかじゃない。
俺は…自分の生きる場所を変えたいだけだ。
アンタは、本当にないのかよ?
---素晴らしい世界ですもの。
幸福に満ち溢れた、美しい世界に生きてます。
これ以上を望んだら、罰当たりだわ。
そのままで充分ですの。
---…痛かったり、汚かったりしないのか?
---全く。
---アンタの世界は、綺麗なんだな?
目を細めて、こくりと静かに頷くお前がいた。
風に美しい髪を揺らし、ワンピースの裾を揺らす。
逐一、美しい。
だったら…。
だったら、俺が出来る事は…。
「守るよ。俺が、お前の世界を」
「……分隊長、様…」
---求める事、ですか。
では……守ってくださりません?
私が住む世界を。
籠の中の美しいままで生きれるように。
リヴァイさんの、その手で。
俺が出来る事は、それなんだ。
お前が美しいままで、美しさを当たり前に過ごせるままで、生きれる場所を。
恐怖も感じる事なく、怯える事なく、愁いを帯びず、優しいままでいられる。
汚い言葉も、否定も罵倒も罵声も冒涜もない、そんな箱庭。
美しいものを、美しいままで。
当たり前過ぎるように。
約束は儚く、叶わない願いでも、そんなの知るか。
例え、この先の最果て、二度と出逢うことがなくたって。
俺が、必ず。
「xxx、俺が
守る------」
きつく握られていたナイフを、歯の部分を握り締め、お前から抜き取る。
歯が掌に食い込み、柄を伝い、赤い血液が床に落ちて行く。
流れ落ちる、お前の血液と同化して、血溜まりになりながら。
細い肩が震えていて、俺の掌に触れて、戸惑うように首を振るお前の頬には、幾重もの涙がある。
俺は自分が汚れる事も、お前の服を血で汚すこともい問わず、きつく、きつく…抱き締めるしかない。
「xxx、頼むから…守らせてくれ。xxxが生きる場所は、俺が、必ず守るからっ。
俺が!
俺がxxxを守るからっっ…!!」
切り刻まれた腕を、涙を流したまま、震えながら回して来る。
生きるだけじゃ、駄目だ。
俺は回された細い腕を背中に感じながら、きつく、再度誓おうではないか。
他の奴等には任せていられない。
そんな事、誰がさせるか。
俺が、xxxを生かすんだ。
xxxだけは、もう、二度と離さない。
「好きだ」
「……分…隊長、様…」
「愛してるんだよ…っ…」
密着を解きながら、血で濡れた手で頬を撫でた。
宛がい、口唇に噛み付いた。
貪るかのように、無我夢中でキスを施す。
「分隊長様、私…わた…し…」
答えは要らない。
俺が愛していれば、それで良い。
ヤバイ位に好き過ぎて、お前が崩れる程の熱情なのだ。
「答えんて要らねぇ。ただ、俺から守られてろ」
お前は、美しいままで。
Fin…xxx
1203/10/16:UP