お手々繋いで


「赤崎のバカ!!もう、嫌いだー!!!!」

俺の家で赤崎とノンビリと過ごしていたはずだったのに、俺は赤崎を軽く突き飛ばすと玄関へと向かった。

最初は些細な「どーてもいい」ようなことから始まった言い争いだったはずなのに、あれよあれよと言う間に大きくなっていき収集がつかなくなってしまった。

勢いよく玄関を閉めるまで赤崎が呼び止めてくれるだろうと淡く期待していたが結局、赤崎は呼び止めてはくれなかった。

イライラしてたり、悲しかったり、色々な感情と一緒に一心不乱に歩いていると、気付いたら近所の公園まで来ていた。
フラフラとそのまま公園の中に入り、目についたベンチへと腰を下ろした。

早く帰りたいと思う自分と、勢いで出てきてしまい今更恥ずかしくて戻れない自分とで揺れ動いていた。

落ち着かずキョロキョロと辺りを見回していると、ふと置きっぱなしのサッカーボールが目についた。
気がつくと、俺はそのサッカーボールを蹴っていた。
…結局、自分にはこれしかない上にボールを触っているだけで落ち着いてくるから不思議だった。
そのままリフティングをリズムよく行っていたが一瞬、ふと赤崎のことを考えていたら凡ミスを犯し、ボールはあらぬ方向へと勢いよく転がっていってしまった。

そのまま目で追っていると、タイミングよく居た人が足でボールを止めてくれた。

「スミマセーン!蹴って……」と言いかけたとき、その足の主が誰だか分かってしまい、俺は言葉に詰まってしまった。

その誰かは慌てている俺に何も言わずにボールを蹴り返してきてくれた。

俺はボールを受け取りながら顔を上げて見てみたが、誰かさんはバツが悪そうな何とも言えない顔をしていた。
きっと、今の自分もそんな顔をしているのだろうな…なんて思うと何だか少し可笑しくて、少し笑いながらその誰かさんにボールを蹴り返した。

「……何が可笑しいんッスか!?!?」
なんて言いながらボールを受け取った誰かさんも少し微笑んでいるように見えた。

もう、どんな些細で「どーてもいい」ことで始まった言い争い、ケンカなのか分からないのだから互いに笑うことしかできなかった。

そのまま、無言のボールのやり取りが続いた。

何度目かの時「世良さん」と呼びかけながら俺にボールを蹴り返してきた誰かさんは、そのまま何も言わずにゆっくりと俺へ右腕を伸ばしてくれた。
俺は嬉しくて素直にそのまま駆けよると勢いよくその腕へと飛びついた。

「世良さん、痛いッスよ。怪我したらどーしてくれるんですか!!」
「しょうがないから俺が面倒みてやる!!」
「そーいう問題じゃないんッスけど……」
と言っている赤崎の顔は可愛らしい年相応の笑顔で溢れていた。
俺たちはそのままキャハキャハしながら家路へとついた。
もちろん、繋いだ手はそのまま離れることはなかった。








** あとがき **

ちゃんと書けたよ、1520話!!!!
セリーがやっと、笑顔だ!!お待たせ、セリー!!
あぁ、よかった!よかった!ww

最初は話の流れは一緒なのですが、違うシチュエーションでの展開を考えてました。
でも、あまりにも長くなりそうだったのでシフトチェンジして、↑に落ち着きましたw

以前の違うシチュエーションでの展開も好きなので、いつか「印象違い」的な感じであげられたら良いなと今は思ってます。

今回のこの話は(個人的には)「バカップル」をテーマに書きあげた1本です。「バカ」と言うよりは、普通のカップルなのかな!?


2011.05.15

加筆修正しました。
2011.09.01



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