「9」の意味
「・・・世良!!」
練習が終わり、クラブに向かっていた俺に堺さんがいきなり声をかけてきた。
「はい!!」と元気よく振り向いたが内心は穏やかではなかった。
「(俺、なんか失敗したか!?でも、今日はうまくできてたはずなのにな……)」
なんて考えていると先輩達は「おぉ、先輩からの愛のお説教か!?」とからかい、笑いながらクラブハウスへと帰っていった。
気づくと、ピッチの上は2人だけになっていたが、堺さんは一向に口を開こうとはしなかった。
俺は耐え切れず
「堺さん…なんか俺、まずかったですか?」
と声をかけながら近づいていくと、不意に両肩を掴まれて、そのままグイッと引き寄せられた。
少しビックリしたが、それでも堺さんは黙ったままだった。
重い空気に耐え切れず
「…愛の告白かなんかッスカ?」とネタっぽくいうと、
「……それに近いかもな」と聞こえるか聞こえないかの小さな声でつぶやきながらフッと笑っていた。
その言葉にドキッとしながら堺さんを見上げると、真剣な眼差しで見つめかえされ
「…世良、俺の背番号「9」を引き継いで欲しい」と告げられた。
「…堺さん、なに言ってるんっスか!?!?ETUのエースストライカーは堺さんじゃないですか!!!!」
「世良、お前も分かってるだろ?もう、俺は終わりだ」
「なんでですか...堺さんはまだまだ俺の憧れッス!!」
…最初は嘘だろうと思っていたが、そうでないと分かると俺の視界は涙でぼやけ始めた。
「…そんな風に思ってくれてるだけで俺は幸せだ。お前の気持ちは嬉しいけど、もうムリなんだ…だから俺の付けてる「9」をお前に付けて欲しい」
……涙が止めどとなく流れ、堪えるように歯を食いしばりながら堺さんを見つめた。
堺さんはそんな俺の頭を優しく優しく撫でてくれた。
「ヤダ…ヤダ…ヤダ…」
俺はまるでダダをこねる子供のように両手で堺さんの胸をドン、ドン、ドン…と叩き続け、ついに耐え切れず、大きな声を上げて泣きながら「ヤダー!!!!」と叫ぶと、フワッと視界が明るくなりそこで目が覚めた。
・・・夢だった。
けれど、手を当てると頬は濡れていた。
起ききっていない頭と身体を動かして冷蔵庫から少し乱暴にビールを取り出すと一気に飲み干し、またフラフラとベットへと舞い戻った。
少し気を抜くと夢のはずなのに、それでも涙が溢れてきて止まらなかった。
** あとがき **
暗い・夢オチで大変申し訳ありません。
セリー、ゴメンネ!!
今度はちゃんと明るいの書くから!!!!
サッカーの気になるアレコレを調べていたら「(一般的に)「9」はエースストライカーの証」と知り、堺さんのプロ意識の高さと「+」「÷2」をしたらこんなお話になりました。
ってか、夢から覚めても涙が止まらないってことはさ、何か思い当たる節があるってことだよね?
……堺さん、本当に申し訳ない。スミマセン。
次回、頑張るから許して!!
2011.05.04
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