雨のち晴れの天気予報


このお話は「(19巻)#182」神戸戦終了後と翌日、ドリさんの症状をみんなに説明する場面の間を妄想して書いたお話です。
なので、そんな場面を想像して読んでいただけると幸いです。
こういうネタは苦手・嫌いっという方はお気をつけください。
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「・・・達海!!」

「っあ?後藤なに?」

「ちょっといいか…病院から連絡があった。緑川の怪我の具合だが……」

「……ちょっと待って」

「つーばーきー!!ねぇ、椿…居ない?」

「……監督、呼びました?」

「呼んだ、呼んだ!!見つかって、良かった。お前、俺の部屋で待ってろ。話があっから」

「……えっ?あっ、はい…分かりました」

「ちょっと時間かかるかもしんないけど、ちゃんと待ってよろ」

「……ウスッ。」

「ゴメン、後藤待たせた。…で、緑川の具合は?」

「あぁ…それなんだかな・・・」


監督はそう言い残すと後藤さんと風のように消えていった。

呼び出された理由は分かっている。今日の試合でのミスについてだ。
こんな風に呼び出されるのは初めてじゃなかったから、呼び出し自体には別に驚きはしなかったが、今日はさすがに呼び出しはないだろうと思っていたから正直面喰った。

色々と手早く済ませ、暗ーい真っ暗な気分で監督の部屋へ行き「・・・お邪魔しまーす」と扉を開けてみたが、やはり誰もおらず、寂し部屋に俺の声だけが虚しく響いた。
まだ居ないということは、ドリさんの具合が芳しくないことを意味している気がして、更に気分を重たくさせた。

監督が集めた書類ならなんやらが散らばる床から座れそうな場所を捜し出し、ゆっくり腰を下ろしてみたものの、まったく落ち着かず、更に暗い気分へと下がっていった。

ふと、目線をさげると箱ティッシュが目についた。そのまま箱からティッシュを乱暴に3枚抜き、2枚はくしゃくしゃと丸めて玉のようにし、残りの1枚をきれいに上から重ねて、てるてる坊主を作った。

作りながら机の上を見るとセロハンテープとペンがあったので、首のところはセロハンテープでぐるぐる巻きにし、そのあと顔を書いてあげた。

何か、別の事をして「今」から逃げたかった自分にはちょうどよい作業だった。別に「今」を忘れられれば、どんなことでもよかったが、今日の雨が憎かったし、次節は絶対に晴れて欲しくて一心不乱に作りづけた。

3つ目のてるてる坊主が完成して、てるてる坊主を見つめながら微笑んでいると急に「なーんだ、そんなに落ち込んでなさそでよかった」と監督の声が聞こえた。

ハッとして、顔を上げるとニヒィと笑い顔の監督がそこに居て、いつ戻られたのか分からなくて、俺は若干あたふたしてしまったが、監督の顔を見たら少しホッとして自然と笑顔になっている自分がいた。

「椿、もっと真っ暗で死にそうな顔で待ってるだろうなって思ったから、笑顔で良かった」と言いながら俺が作ったてるてる坊主をどこからか出てきたタコ糸で首の辺りを2〜3周巻くと余った部分でカーテンレールへと結んでいった。
あれよあれよとその作業が進められ、あっという間に俺の作った3つのてるてる坊主はまるでカーテンレールの一員のような感じでなじんでしまっていた。

「…これで、次節の山形戦は晴れだな、椿」

「・・・ウスッ。」

「なんだ、やっぱり色々考えたのか。まぁ、考えてなきゃ、こんなにてるてる坊主なんて作んねーか」
俺はその言葉に何も返すことが出来なかった。下を向いて少し黙っているとスッと監督の腕が俺に伸びてきて、ポンポンと頭を軽く撫でられながら「あんま、考えすぎんな。その思いは次の試合で晴らせ。…どーしょうもなくなったら、俺んとこ来い」と言われて、俺は泣いてしまった。

そんな俺を監督はいつまでもやさしく抱きしめてくれた。

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山形戦当日

「ほら、達海さん…早く、起きて!!今日は山形まで行くんですよ!!」

「…ヘイヘイ、起きますよー」

上半身を起こし、カーテンを少しめくって外を見みるとこれからまぶしくなるよっと言わんばかりに太陽が輝き始めていた。

「前節とは打って変って晴れてよかったですね!!」

「そうだね、きっと願いが通じたんだよ」

「……願い?なんの願いですか?」

「っあ、なんでもない!ほら、有里!早く準備しないと!!」

「っは!そうだ!でも、気になるんですけど!!なんですか?なんなんですか?」

「…教えないよー」

「達海さんのケチー!!」なんて、2人でたわいもない話で盛り上がっていたら、有里は呼び出されそそくさと俺の部屋から出て行った。

俺はそっと椿の作ったてるてる坊主に感謝しながら戦闘服へと着替えて行った。




**あとがき **

久々にちょっぴり長めのお話になってしまいましたね。SSの域を越えてしまって申し訳ないです。

19巻を読んだ後にふと思い付いていたお話を遂にちゃんと書いてあげました!
本当は山形戦の結果をきちんと見てから書くかどうか決めようと思っていたのですが、7/7のお祭りだし、つい耐えきれず書いてしまいましたw

何か、各所色々とあるので落ち着いたら少し書き直すかもしれないです。

とりあえず、ずっと書きたかったお話が書けて良かった!!

2011.07.04



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