きまぐれ


夜、フラフラとグラウンドにおもむくと、鋭いボールを蹴る音、そのボールがゴールに入りネットの揺れる音と「…よし!」と喜ぶ声が聞こえた。

今夜もアイツは1人で練習中のようだった。アイツの視界に入れば入るで、緊張させてしまって可哀想だし、俺も今は誰とも話したくなかったので俺はなるべく気配を消してそっとグラウンドへと入っていった。

気配を消しているつもりだったがアイツには何でも見えているようであっと言う間に気づかれ、案の定アイツは硬直してしまっていた。

「……椿、いい加減に俺ぐらには慣れろよ。」

「…ウス。スミマセン。」

「「スミマセン」じゃねーよ。寂しいじゃんか。まぁ、いいや。俺は逆方向で考え事とかしてるから、俺のことは気にせず続けて良いからさ。あっ、俺の邪魔はするなよ?」

「ウスッ!監督、ありがとうございます!!」

そう、言葉を交わすと俺は椿に背を向け、反対方向へと歩き始めた。

背後の気配から最初のうちは俺のことが気になり集中できなかったようがだが、そのうちあいつも慣れてきたようで、心地よくゴールが決まる音が響くようになった。
俺は、グルグルと少し歩き回ると、ドンっと腰を落とし、大の字になって芝の上へと寝転がった。

夜風と夜空と椿の気配が心地よく、ふと今まで思いつかなかった事や今まで思いついていた作戦の欠点が浮かんできたりと、有意義に過ごしていると「……監督!!」と椿に声をかけられた。

何事かと思い、ムクっと上半身を起こすと走り寄ってきた椿は急に「監督…達海さん…好きです!!」と告白してきた。

「ど、どうしたんだよ急に…」嬉しいは嬉しかったが、あまりにも急過ぎてビックリしていると「今なら言えそうな気がしたんで…スミマセン、お先に失礼します!!」と言い放つとポカーンとしている俺の前から嵐の如く去っていった。

走り去る椿の後ろ姿を見ていると、さっきの言葉が脳内でリフレインしてきて、嬉しくなってニヤニヤが止まらなくなってしまった。

ふと我に返り「・・・俺の邪魔、するなって言ったじゃんか!!」と叫んでみたが、もうそこに椿の姿はなかった。









** あとがき **

さりげなく、こんな純粋?なタツバキは初めてかもですね!!
ってか、これはタツバキって言ってよいのかな?なんか、間違ってるかもしれないですね。スミマセン。椿もタッツも笑顔ならよし!!みたいな気分で書きあげたお話です。
そんな気持ちが1mmでも伝わると良いなぁっと思う今日この頃です。

2011.07.03



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