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テーブルにだらりと寝そべる様に身体を預けて、片手で携帯を弄っている。カフェテリアでの私とメイにはよく有ることで、お互いが同じ時間、同じ空間で思い思いに過ごすことが出来るというのは、恐らく贅沢なことだろうと思う。互いの学部が違う為に同じ授業を取るということは出来ないから、せめてもと空き時間を合わせた。空き時間は必ず共にすると決めているわけでは無いけれど、いつの間にかカフェテリアで同じテーブルについているのが常だ。
高そうなティーセットは学内のカフェテリアのメニューにも関わらず本格的なロイヤルミルクティーを楽しめるので、決まって注文するようにしている。ただこれがもし紙コップに入ったチープなものであったとしても、今この時間が贅沢であることには何の変わりもないだろうと思う。
向かいにうなだれる様な彼女の短い爪の先が素早く動くのを見ながら、「誰とメール?」とふと尋ねてみた。


「滝くんと商店街組」
「滝くん?」
「テニス部にいたでしょう?幼稚舎から氷帝の…アリサ同じクラスじゃなかった?」
「ああ、ハギノスケ?」
「そう」
「商店街は、…宍戸とか?」
「そう、そのあたり」

「明日の試合のこと、みんなメールしてくれたから」そう話しながらも、メイは画面から目を離さないままでいた。カチカチと押しつづけられていた指がぴたりと止まると、彼女は携帯を閉じてそれをテーブルの上に放り投げた。彼女の携帯の扱いが悪いのは今にはじまったことではなかったから、磨きのかかった綺麗なテーブルへそれを投げたとしても、今更咎める気にはならなかった。

「そういえば、侑士が明日送っていってくれるって」
「忍足も大概暇ね。まだ都大会なのに」
「本当に、仲が悪いんだから…」
「だって」

メイが言いかけたところで、私の携帯が震えた。テーブルの上のそれはよく響いて、私はすぐに携帯を手にして開いた。
「白石くんか」と呟くと、メイがちらりと目だけでこちらを向いた。

「あんたまだ白石とかいう人とメールしてるの」
「うん」
「やめておきなよ」
「…どうして?」
「無駄でしょう」
「何が?」

疑問をぶつけると彼女は押し黙ってしまった。私の疑問をぶつける声が、思いの外強い口調になってしまったからかもしれない。目の前の彼女は少し考えるような素振りをしてから、「その携帯、」と渋そうな顔で続けた。

「まだ跡部の名義なの?」
「うん。家族割だよ」
「……」
「それが?」
「この間の水曜、授業の後何してた?」
「あれ、言わなかったっけ?侑士と映画に行ったよ」
「…今キープしてる男の数」
「そういう人はいないよ」
「ふうん」

「何が言いたいの?」
語気を強めて、尋ねた。「どうしてそんな事を聞くの?」だなんて尋ねる程鈍感でも無いし、ましてやメイから逃げようなんて思わない。それでもわかりきっている彼女の本意を尋ねたのは、私にもそれなりにプライドがあるからだ。例えどんなに、彼女が私をよく知っていたとしても。

「アリサは、忍足に頼りすぎ」
「…確かに、それは反論しないけれど」
「こんなこと言わなくても、あんたもわかってると思うけど」
「……うん」

「忍足は、まだあんたのことが好きだよ。きっと、いや、絶対に。」


知っているよと答えたら、私は悪になるのだろうか。
けれど私だって、侑士だって、一緒なのだ。想い合えないことよりも、傍にいられなくなるのが、怖い。だから言わないし、言えない。言ったところで何が変わるのかなんて台詞を建前にして、口にして何かが変わってしまうのを恐れている。目の前の彼女だってそんなことはわかりきっているのだ。
ただ彼女の言いたいことはひとつ、もう、限界なんじゃないかってこと。


「私、悪いけど明日はひとりで行くから。忍足には断っておいて」

そんな風に放り投げ出されても、きっと私は何も言えない。何故ならば、彼女が本当に私に求めているのは、忍足侑士との関係のことなんかでは無いから。



「好きだなんて、今更言えるわけないでしょう」




想い合えないことよりも、傍にいられなくなるのが、怖い。兄だなんて思ったことは一度だって無い。けれど、傍にいられればそれだけで、妹だって、何だっていいの。
だからどうか気付かないで、景吾。





(100506)





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