2013WD そのよん

ゾロと食堂で別れ、サンジくんと二人で構内を歩いていた。
ゾロに奢ってもらっちゃった話をしたら火が出る勢いで怒ってたけど、それでもサンジくんはわたしを待たせたことを気遣ってくれた。

うん、やっぱり、わたしは彼の優しいところに惚れたんだと思う。


心なしかにやけながら一緒に歩いていると、少し珍しい人を見かけた。



「よう、黒足屋」

「あ、トラファルガーくん」




医学部の彼は忙しく、棟も離れているからあまり会うことがないのだけれど、たまに会うと話をする程度には仲がいい。
トレードマークともなっている隈は健在だ。
また寝てないのかな。少しだけ、心配になる。



「珍しいね、ばったり会うなんて」

「あァ、こっちの方に来てると聞いたんでね」

「え?会いに来てくれたってこと?」

「クク、まァ、そうとも言うな」



楽しそうにトラファルガーくんは喉で笑っている。
口の端をあげて笑うこの笑い方、トラファルガーくん独特だな。



「てめェこの野郎、なに●●ちゃんと恋人同士みたいな会話してやがんだ!●●ちゃんの恋人はおれだぞおれ!」

「クク、やめとけ、男の嫉妬はみっともねェ」



ゾロと違ってさらっと受け流せる彼は余計にサンジくんの熱をあげる。
トラファルガーくんもトラファルガーくんで、そういうサンジくんを見て楽しんでいるからタチが悪い。



「で、お前なにしにきたんだよ」

「そう睨むな、コイツを●●に渡しに来ただけだ」



トラファルガーくんが何やら大きな包みをわたしに差し出してくれる。
なんだろう、と思いつつ受け取ると、ずしりと結構な重みがある。

これって、もしかして、お酒?



「そうだ、なかなか美味いぞ、それ」

「いいの?そんないいものもらっちゃって」

「お前のために選んだんだ、いらないって言うのか?」



にやり、とトラファルガーくんが笑う。かっこいいなぁ相変わらず。
彼がモテる理由はこういうところにあるんだろうなぁ。ふむふむ。



「ううん、すっごい嬉しい!ありがとう!サンジくんと二人で楽しむね!」

「クク、ああそうしろ、じゃないとコイツがメソメソするからな」

「しねェよ!!」



彼はひとしきりサンジくんをからかったあと、じゃあなとスマートに医学部棟の方へ去っていった。
スタイリッシュだなァ彼は。サンジくんとは違ったスマートさがある、と常々思う。



「すごいね!トラファルガーくんの選んだお酒なら、相当おいしいんだろうね」

「●●ちゅわん…おれだって一流だよ」

「もちろん!サンジくんが一番だってことはわかってるよ」



少しすねたように唇を尖らせるサンジくん。寂しげに下がった眉がとても愛らしく見える。
ああ、愛しいなあ!
安心させるように、サンジくんの手をぎゅっと握って、彼の顔を覗き込んだ。



「サンジくんのお料理が一緒ならもっとおいしくなるから、最高のお料理をお願いしますね、わたしのシェフ」



少し冗談めいた調子でそう言うと、サンジくんもふっと笑ってくれた。
そのまま、握ったままのわたしの手を取って、軽く手に口付けてくれる。



「承知いたしました、マイプリンセス」




トラファルガーくんも素敵だと思うけど、やっぱりサンジくんがいちばんだ。

さあ、ルフィからもらった金平糖を食べながら一緒に帰ろう。
帰ったら一緒にウソップからの贈り物を開けて、トラファルガーくんからのお酒を一緒に飲もう。







→そのご



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