2013WD そのさん
すてきな贈り物をしてくれたウソップと分かれて、今度こそ食堂へ。
ルフィの珍しすぎるおすそ分けといいウソップの手の込んだプレゼントといい、今日は不思議なくらいいろいろ貰えるなぁ。いい日だ。
そんなことを考えていたらすぐに食堂についた。
いつもなら、仲の良いひとが誰かしらご飯を食べていたり、喋っていたりするんだけれど。
きょろきょろと見回しながら食堂に入っていくと、横から「おい、●●」と呼び止められた。
「あ、ゾロ!ご飯食べてたの?」
「いいや、ここで寝てた」
何もわざわざこんなに騒がしいところで寝なくても。
ゾロは確かに寝起きのような顔で、自分の向かいをさして、座れよと言ってくれた。
その言葉に甘えて向かいに座ると、ゾロがひとつあくびをした。のどかだ。
「グル眉はどうしたんだよ」
「ふふ、みんなそうやって聞くね、いまは講義中なの」
「あいつがお前のそばから離れるなんて天変地異だろ」
さすがに言い過ぎだけど、確かにそう言われても仕方ないくらいにいつも一緒にいる。
不思議だけど、サンジくんとなら大丈夫なんだよなぁ。これが愛かな。
ゾロはそんなの知るかと冷たく一蹴。でもいいんだ、幸せだから。
「とうとう言うことまであいつに似てきたな」
「ゾロも見習う?毎日楽しくなるよ」
「ふざけんな、おれを巻き込むんじゃねェよ」
ゾロにはいつもこうやって冗談を言うけど、ちゃんと笑いながら返してくれるから好き。
そうして少しのあいだ談笑を楽しんでいたら、ゾロが思い出したように声を上げた。
そしておもむろに立ち上がり、「何食いたい」と問いかけてきた。
「え?いまはお腹すいてないしサンジくん待ってるだけだからわたしは食べないよ、ゾロお腹すいてるなら買ってきなよ」
「じゃあなんか飲むか」
うーん、せっかく聞いてくれたし、ゾロがなんか食べてる横でわたしはなにも、っていうのもなぁ。
「それじゃあアイスティー飲もうかな」
「わかった、まってろ」
「ありがとー、後で払うね」
「ほらよ」
「ゾロありがとう!いくらだっけ」
「いらねェよ」
「そんなわけには!ナミみたいに怖くないよ、わたし」
「あいつが聞いたら怒るぞ」
クスクス笑いながら財布を取り出そうとすると、ゾロがそれを制した。
どうやら奢ってくれるらしい。
ゾロがナミに奢らされる以外で人に奢るなんて珍しい。
「珍しいね、ゾロ」
「その珍しい申し出を断るような野暮な真似すんじゃねェよ」
「ふふ、ありがとう」
なんだか嬉しくなってきた。ゾロもいつもより穏やかだし、何かいいことがあったんだろうな。
そのままゾロと二人でくだらない話に花を咲かせていると、ゾロが「出たぞ、お前の」と喉で笑いながらわたしの後ろを指差した。
「おいクソマリモ、出たとはなんだ出たとは」
「間違ってねェだろ」
「あ、サンジくんお疲れ様!」
「●●ちゅわーん、会いたかったよぉ〜!」
「おい●●、やっぱりこいつ頭やばいぞ」
「あんだとコラァ!」
今日のゾロは穏やかに見えたけど、サンジくんに対してはいつもどおり好戦的だ。
もう慣れたこの言い合いは、もはや一日一度見ないとそわそわする。
わたしには見せない、男の子にしかしない態度のサンジくんを見るのも嬉しいのだ。
「おれとしたことが…マリモなんかに●●ちゃんを…」
「ハッ、残念だったな」
「もう、ゾロもそんな挑発しないで!」
「クク、悪かったな」
サンジくんをからかうゾロはすごく楽しそうだけど、どこかで止めないとね。
ゾロにアイスティーのお礼を言うと、少し微笑みながらひらひらと手のひらをゆっくり振ってくれた。
結局ゾロにももらっちゃったことになるなぁ。みんなありがとう。やっぱり、今日はいい日だ。
→そのよん
(20130314)
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