2013WD そのに


「そうだ●●ちゃん、今日おれの方がひとコマ多いだろ。おれが終わるまで、ナミさんとか、誰かはいるかい?」


少しだけ申し訳なさそうにサンジくんが眉を下げた。
いつもそうだ。サンジくんは、わたしを一人にしないように、すごく配慮してくれる。

大概はわたしが同じ学部のナミが一緒にお茶したり付き合ってくれてるんだけど、ナミの都合がつかないときはルフィやウソップに連絡して呼んでくれたりするのだ。



「うーん、今日ナミは忙しそうだったけど…でも食堂にいけば誰かしらいると思うから大丈夫だよ、ありがとう」

「もし誰もいなかったら遠慮なくメールしてくれればいいからね、すぐ行くよ」

「だーめ、サンジくんはちゃんと講義うけて」

「いいや、●●ちゃんを一人にはさせられねェ」



ちょっと過保護な気もしなくもないけど、サンジくんなりの優しさなんだろうな。
束縛と感じたことはないし、むしろ愛情を感じるくらいだから、何も不自由していないんだけど。



「それじゃサンジくん、全部終わったら食堂で待ってるね」

「うん、終わったらすぐに行くよ、それまで我慢、な」

「我慢するのはどっち?」

「クク、おれ」



冗談を言ってふたりで笑ってから、棟の分かれ目でお互いに手を振った。








「お、●●じゃねェか」

「あ、ウソップ!」



あれから講義をすべて終えて、さあ食堂だ、と向かい始めたところで、見慣れた長い鼻を発見。
何やらいろいろ持ってるんだけど、これから研究室に行くのだとか。大変だなァ。



「そういえば今日はサンジの奴と一緒じゃねェのか?珍しいな」

「サンジくんは今は講義中なの、あとでまた合流するよ」



へェそうなのか、と頷いて、ウソップはごそごそとカバンを漁っている。
彼のカバンはいつも大きくて、何が入っているのかわからないほど膨れ上がっている。



「ちょうどお前に渡してェものがあったんだよ」

「え?なになに?美味しいもの?」

「お前なかなか食い意地はってんな」

「一流コックの連れですからね」



ウソップが笑いながらカバンから包みを取り出した。
なんだかファンシーな包みだけど、一体なんだろう。



「なんかよさそーなのを思いついたからよ!お前絶対ェ好きだと思って」

「え?これなに?あけていい?」

「もちろんだ!開けて驚け、自信作だからな」



ふふんと得意げにウソップが言うので、これは期待大とわくわくしながら包みを開けた。
ウソップは器用だから、彼の自信作ということは相当期待できる代物だろう。


ぺりぺりと包み紙をはがすと、なにやら箱が出てきた。
それもそっと開けると、なんと、人形が入っていた。



「え…うそ、これ、サンジくんとわたし?」

「そうだぜ、どうだ、おれ様のお手製だ」

「すごい!かわいい!ありがとう、大切にするね!」

「いいってことよ」



ちょこんと箱の中に鎮座するサンジくんとわたし。
小さなハートのモチーフを二人で囲んで、寄り添っている。
サンジくんの特徴的すぎる眉も細かく作りこまれている。
さすがウソップ、としか言い様のない出来に自然と笑みがこぼれた。
家に持って帰って飾って、サンジくんとふたりで大切にしよう。



またひとつ思い出ができそうな予感。








→そのさん



(20130314)

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