そのさん
「あ、あのへんね」
ナミが指さす方向を見ると、確かに見慣れた姿が並んでいた。
緑色のゾロの髪、そしてサンジくんのきれいな金髪。離れていても目立つそれに、きゅんと小さく胸が高まった。
カラン、コロン。
二つの下駄の音を小さく立てて、皆に近づく。
じわりじわりと近づいてみてわかった。男の子たちもみんな、浴衣を着ている。
灰色の落ち着いた浴衣をさらりと着こなしているサンジくんの姿をとらえて、またどきんと胸が高鳴る。
カラン、コロン。
またじわりと近づくと、下駄の音に気付いたのか、サンジくんが視線をこちらへ向けた。
一瞬びっくりしたように目を見開いてすぐに、いつものやさしい顔に戻った。
「おお!ナミ、●●、来たか!」「おせェんだよ」「なによ、女の子には準備があるの」
みんなの声が聞こえる中、サンジくんが微笑みつつ私に小さく手招きをした。
なんだろう、と思ってサンジくんに近づくと、くいっと軽く手をとられた。
「●●ちゃん、その浴衣、すげェ似合ってる、すげェ可愛い」
やさしい瞳で、口元で、そんなことを言われたら。
恥ずかしくなって、ちょっと下を向いてしまった。
斜め上から小さくふふっと笑う声が聞こえた。
「サンジくんも浴衣、すごく似合ってる。すごくかっこいい」
「だろ?●●ちゃん、こういうの好きかなと思ってさ」
余裕そうに微笑みながら、そっと指を絡めてくれた。温かくて、しばらく離れていたその温度に安心するしときめく。わたしの心は忙しい。
「ほーらお二人さん、そろそろ行くぞー」
「あ、はーい!」
声をかけてくれたウソップに続いて、二人でゆっくりと歩き出した。
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