2013WD そのご

「おっと●●ちゃん、ちょっと待ってくれ」



がちゃ、と部屋の扉を閉めるなりサンジくんがそう言いながらわたしを抱きしめた。
視界がサンジくんのカーディガンでいっぱいになる。



「少し乱暴かもしれないけど、ごめんね」

「え?」


状況が飲み込めなくて、サンジくんを見上げると、サンジくんは「ちょっとの間、目つぶってて」と悪戯っぽく笑った。

なんだろう、と不思議に思いつつゆっくり目を閉じると、そのままそっとサンジくんがわたしを抱き上げた。

思わず、わ、と声を漏らしてしまうと、近くでサンジくんがクスクス笑っているのがわかった。



そのまま、ゆっくりとサンジくんに運ばれる。
ふわふわとした浮遊感の中で、サンジくんの香りを強く感じた。
それだけでもうくらくらしてしまうような感覚。


しばらく歩いたところで、サンジくんが、優しく「降ろすよ、●●ちゃん」と囁いた。
そうして、目を閉じたままゆっくりと降ろされる。

部屋はまだ真っ暗だ、と目をつむっていてもわかった。
こころなしか、部屋は暖かい。なんだろう。



「よし、●●ちゃん、目ェ開けて」



サンジくんがそう言うと同時にパチっと電気をつけた。
ずっと闇に慣らされた目には少し眩しく感じられた、けど、眩しかったのは光だけのせいではなかった。




「え、うそ、なんで、」



目を開けると、ダイニングのテーブルには、まるで一流レストランで出されるディナーのような、とてもとても美味しそうな料理が並んでいた。

サンジくんのご飯はいつでも美味しいけど、今日のは見た目からしてもう格別。
テーブルのうえの花も、きれいに磨かれた食器も、何もかも完璧。



「貴女の為に用意いたしました、プリンセス」

「サンジくん、これ、いつの間に」

「それは秘密」



人差し指を唇にあててウィンクをひとつ。すごくサマになってる。


本当に、こんなに素敵なものいつのまに。
今の今まで一緒に学校から帰ってきて、一緒にいたのに。
まさか。



「…サンジくん、今日、ほんとは講義ひとつ多くないんでしょ」

「クク、バレちまったか」

「その間にこんなすごいの準備してくれたの?」

「ああそうさ、たまには●●ちゃんをびっくりさせたくてね」

「もう…すごいびっくりしたよ」



そう言ってぎゅっとサンジくんに抱きつくと、そりゃよかった、と笑いながら頭を撫でてくれた。
あまりに嬉しくて少し涙が浮かびそうになるのを抑えた。



「さ、冷めないうちに召し上がれ」

「うん、いただきます!」



二人で席について手を合わせた。
さっそくサンジくんが作ってくれたシチューを口に運ぶと、言葉にできない美味しさで。
無意識に頬が緩んでしまったのだろうか、サンジくんが自分はスプーンも持たずに頬杖をついてにこにここちらを見ていた。



「おれァ●●ちゃんのその顔が大好きなんだ、それが見れただけでもう幸せさ」



そんなかっこいい笑顔でそんな嬉しいこと言われたらさすがに照れちゃうよ。
わたしだって、サンジくんのその優しい微笑みを見れただけでも幸せ。



「そうだ、せっかくだしトラファルガーの奴からもらった酒でもあけようか」

「あ、うん、そうだね」



サンジくんがお酒を開けるために一度立ち上がったのを見て、そうだ、わたしも今ウソップからの贈り物をあけよう、と思った。

わたしが席へ戻って箱をあけると、ちょうどサンジくんがグラスを持ってきてくれたところで。



「ん?●●ちゃん、それなんだい?」

「あのね、今日ウソップがくれたの」



ほら、と蓋を外して人形を見せると、おお、とサンジくんは感心しているようすだった。



「手作りなんだって。ほら、わたしとサンジくん!」

「へェ、器用なもんだな」



いろんな角度からのぞきこむサンジくんがかわいくて、思わずクスクス小さく笑ってしまう。
箱からそれを取り出して、サンジくんがテーブルに飾ってくれた花の横に置いた。
ご飯を食べ終わったら、また、寝室に飾ろう。



「今日は幸せだなァ、いろんな人からいろんな物もらっちゃった」

「クク、そいつはよかった」



でも、本当に不思議。
いつもサンジくんはお姫様扱いしてくれるけど、それはあくまでサンジくんだけがしてくれるのであって。

今日は、珍しいことがありすぎた。
ルフィからの食べ物のプレゼント、ウソップからの手の込んだプレゼント、ゾロの奢り、トラファルガーくんのわざわざ会いに来てくれてのプレゼント…。




「タネ明かしをしてあげようか?」

「え?うん、知りたい」

「今日、3月14日だろ」

「あ!ホワイトデー!」

「ふふ、そう、それで、ナミさんが男どもに、『いつもお世話してやってるんだから女子に心からの贈り物をしなさい!』ってな」



うわ、ナミらしいな。
そうか、だからみんな、今日はすごいたくさんプレゼントをくれたんだ。
サンジくんもそれを知ってたから、わたしが男の子からプレゼントを渡されててもあんまり怒らずに見守ってくれたんだ。
ゾロはきっと見つからなかったから奢ってくれたんだろうな。

でも、ナミにそういわれたからって素直にこうやって素敵な贈り物をしてくれるみんなが少しかわいい。
まさかのトラファルガーくんまで。
ほんとに周りの人に恵まれてるなぁ。



「でも、サンジくんからのプレゼントがいちばんだったな」



サンジくんの方を見てにっこり笑うと、サンジくんも笑みを返してくれた。




「ありがとう、大好きだよ、サンジくん」

「ああ、おれもクソ好きだよ、●●ちゃん」






(20130318) end

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