ルドルフ | ナノ



飛空挺に乗り込んで船端から見えたアガルトの山が大きく欠けて穴があいていて、まるで大きな魚に飲まれるように飛空挺がその中に入っていく。
聞いた話だと、これから地下の世界に入るらしい、太陽の無い世界はどんなものだろう?とぼんやりと考えてみた、作物は、生物は、そこにあるのだろうか?飛空挺みたいな機械ばかりが住まう国とか…あるわけないか。
ファイアで松明代わりにはなるだろうから放つ準備をしながら、取り留めの無い事を思い浮かべては消してを繰り返していると、遠くで砲撃の音が聞こえた。
なんだ?と首を動かしてそちらを伺えば、地を走る巨大な武器と赤い翼が戦っていた。

「…ちょっと行ってくる」
「サメラ殿!?」
「すぐ終わらせる。直ぐに戻る。先に行け」
「アガルトの傷は!?バロンでの熱は!?」
「問題ない。」

鎧を脱ぎ去って、大刀を置いてから、制止の声を聞かずに風を呼び出して空を駆け出して行った。

「…行っちゃった…」
「まぁ…アレなら、大丈夫じゃろ!」

シドが笑う頃合いには、船を大きな雷で二艇落として、赤き翼が撤退して行った。

「下がりおった!」
「サメラ殿やりましたな!」

ヤンとシドが歓喜の声を上げ二人で喜び合う。セシルやローザはほっとした表情を浮かべている。カインは、飛んでいく赤い翼を見つめていた。

アガルトでみた暗い気配は感じない。この間のは、本当に気のせいだったのだろうか?問いかけても答えなんか無い。

程なくして、サメラが帰ってきて、ヤンとシドにもみくちゃにされながら、ふとサメラが呟く。

「高度、下がってないか?」

サメラの声に反応するように、飛空挺の羽の動きが弱まった。かすかに、ぷすん。と言う音もサメラは聞き漏らさなかった。推進力も浮力もなくした船はどうなると、思考を巡らせた刹那怒声が響く。

「……落ちるぞぃ!」
「えっあ…エアロォオ!!」

精一杯の魔法をつかっても、そんなもので船一つが浮くわけでもなく、かろうじて落ちるスピードを落として、船は不時着するのであった。

「…エアロガっ!!」

暴風を御して、衝撃を緩和させて、サメラは酷く肩で息をするのであった。

「サメラ、あなたって凄い魔法を使えたのね!」

嬉しそうなローザに曖昧に返しながら周りを見てくるとサメラは船をあとにした。


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