ふわふわして、微睡む。遠くで人の気配がないような気もするが、今はただ寝ていたいかな。と、寝返りを打つ。 しばらくして遠くで地の底から響く音を聞いた。それで意識がはっきりして飛び起きた。 アガルトの火山が噴火したかと思ったが、あの山はそんな予兆はなかったはすだなと遠い昔の記憶を思い出す。目の見えない薬師の婆様がアガルト出だったと思い出して胸が痛んだ。 「…くそ…」 周りを見回したが、誰も居なくてとりあえず自分の体がきちんと動くかを確認する。バロンで毒虫に噛まれた時の熱はようやくとれたみたいで妙な痺れもなにも無くなったように感じる。睡眠て大事なんだな。と他人事みたいな感想を漏らした。 「…まだ…戦える。…まだ…立てる。」 鎧を回収してから仲間を探そうと、立ち上がると遠くでバタバタと足音を聞いた瞬間になにかがなだれ込んできた。 「おはようサメラ、行こう!」 津波のような勢いで入ってきたのがセシルだと理解する頃にはキラキラした目をして、新しいおもちゃを手に入った子どものような笑顔でサメラの手をとり彼は言う。 「…あぁ。今行く。」 何があったかはカインから聞いただろう。それをも気にせずセシルは声をかけたのだろうか。サメラは小さく首を傾げてから、荷物を持ってテントを畳んだ。愛用したダガーはしばらく使わないでおこう。そう決めて、荷物の底に入れた。 力をつけなければ。速度や瞬発力はあれど、サメラが持ち合わせてないのは腕力とスタミナである。大きなものをずっと持って歩いてはいたが、それでもまだ足りない。次の町で買い足そうか。と頭で考えながら旅立ちの支度をする。 いつも使ってた背丈と同じ大刀を背負い、サメラはアガルトから出た。 背に大刀。腰に荷物。軽い鎧を纏い、神を高くに結い上げて持て余した部分は鎧の中にねじ込む。 飛空挺はエンジンを鳴らして空を切り裂き始めていて、仲間がそこからサメラを見て、手を振っている。 サメラは一旦足を止めて、片手を上げて応え、一人呟く。 「さよなら、赤華。」 小さく息を吐き出して、また彼女は歩きだす。その瞳は臆する事なく前を見据えていて、遠くを見ている。 すべて終わったらその時は―――。 「仲間の側で。生きよう。」 前 戻 次 ×
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