「暗黒…?」 闇を宿し体に負荷をかけ、強靭で根こそぐ揺るがない力。陽炎のように揺らめくそれは、サメラの背後から、無くなっていた。見間違いだったのだろうか、と思考を追いやるとサメラが居なくなっていた。 狭い町なのに、あちらこちらで魔物の声がする。そちらに行けどサメラは見えず、カインは音をたよりに走っていた、見通しの悪い十字路を越えようとしたら、サメラとマラコーダが後ろからカインを抜いていった。 闇のような毛皮の獣が夜闇に紛れるように、身をひねり斬撃をひらりと交わし、爪を振り上げた。サメラは構わず武器を片手剣に変えてから、利き腕でない方をそれに目指して腕を刺す形でそマラコーダの腕を、征した。 「…オマエヲ、タオス…」 サメラと思えぬ低い声を聞いて、マラコーダはにやりと笑って、人型へと姿を変えた。 闇夜のような サメラの腕からマラコーダの爪はするりて抜けて、二人の間にまた距離が空いた。 「成長はまずまずだナ。闇は芽吹きつつあル。」 「……お前を私は許さない…何に変えても、倒す。」 「おぉ、怖い怖イ」 ふざけたように身を振るいあがらせて、嘲笑った。サメラはマラコーダを睨みつけて、武器を組み替え、握りしめた。バチバチと、爆ぜる音と共に赤が舞った。マラコーダはニヤリと笑って姿を変えた。 線の細い、痩せた男。 キャラバンの団長ルドルフとは逆で、それは怯え叫ぶが、サメラは気にせず、切り捨てた。 「それももう居ない。」 刃は風を起こして、見事に土煙が撒き上がらせて、視界を奪った。撒き上がり、静まるまで待たず、その中からマラコーダは飛びだして、サメラに襲いかかった。紙一重で初撃を交わして、サメラは刃を裁き、二人の得物で押し合う。二人のやり取りの鮮やかさに、一瞬見とれたカインが我に返って槍を握り、駆けた。 「入るぞ。」 音に反応してサメラは、マラコーダから離れて、カインを睨んで、唯一の武器を放つ。 「これは、私の戦いだ。誰にも手出しさせない」 「ふン、羽虫が戯言ヲ。お前の戦い方なゾ、昔から知っていル」 「誰が、虫だ。」 私は昔から知ってる私ではないさ。 ニッと笑ってサメラはその両手に光を貯めた。 「詠まれるなら、違う戦いをするまでだ」 この間の借りは返すさ。 前 戻 次 ×
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