一つ一つ針をすすめ繕いをし、投げられた収支を拾い上げて眺めていたら、違和感のある音が聞こえた。 地面に落ちたスプーンが視界に入ってサメラは立ち上がる。異変に気づいたローザが立ち上がった瞬間に崩れ落ちた。 驚いたヤンが駆け寄ろうとして、まばたき一つせず固まった。シドは机に伏せて寝ている。 敵襲かと周りを見回したがそんな雰囲気も感じずに、寄る。 「体に異変はないか。竜騎士」 「俺は特に、なにも。」 「原因の心当たりを探せ、私は団長に報告をしてくる。」 「そんな必要は、なイ」 新たな声がしてそちらを向く。テントの入り口でニヤニヤ笑う、団長。ルドルフが居た。腕を組み見下し笑うその表情にサメラの目線が鋭くなった。 「また会ったナ、」 「その話し方は、マラコーダか。」 「久方ふりだナ。竜の騎士。」 「団長をどこにやった。」 「元よリ、そんなのは居なイ。」 異端を集め、人を増やし魔へト、変えるために我は、キャラバンを作っタ。 それを聞いて、魔物の匂いが団長からしていたのかと、理解した。 「いつからお前は魔物ったんだ。」 「昔から、拾う前から魔物サ。」 「他の仲間は…」 「仲間?おかしな事ヲ言うもんダ。」 君ハ、ずっと独りダロ?仲間はみんな死んだじゃないカ。育ての親モ、君が殺めタ。畏怖され、売られ、飼われ、我ニ、ルドルフに裏切られ、独りジャないか? サメラそう認識した瞬間に、足元の温度が変わった。冷たい空気と、僅かな水音が聞こえた。夕闇に紛れたそれにわずかな鉄の匂いと鎧の音。 「おい、しっかりしろ。」 「!?」 形を叩かれハッとした幻を見たようで、足元は、血溜まりもなにっないただのシートだった。 「ハハハ、まだ薬が利いてない奴ガいたトハ、面白い、面白い。サテ、話を戻そうカ」 苦しむ元、それはゆるりと命を削ぎとる毒。内症から来るものにより、魔法も薬も利かぬ。とそれは言う。 首を差し出せ。然れバ、薬に侵された者ハ、助けてやろウ。村はずレに居る。来イ。 けたけた笑うマラコーダに、カインかやりを投げた。槍は空を切り、そこには何もいなかった。 「…団長が、マラコーダ…ずっと…」 自分で吐き出した言葉に、胸が痛む。 何も知らず、心を持たぬままだったなら、ゴルベーザの配下でずっと。刃を振るい、人を殺めて生きていたのだろうと思うと背筋が冷えた。 前 戻 次 ×
|