ルドルフ | ナノ


あぁさっきの悲鳴はこれだったのかとセシルは納得した。腕を長い羽織りで隠し腹を出し、ひどく短いスカートでサメラが現れた。触んな。とも怒鳴り倒したのだから、無理やり着替えさせられたのだろうと察した。

サメラは、小さなボールの上に立ち上がり、バランスをとり長剣を五つをジャグリングしていた。キャラバンで培ったことをまたやるなんてなぁ。と考え事しながら長剣の柄を掴み勢いをつけて風を切らせ時折高く時折落とすようにして観客に驚きを与え、司会の団長が話をする。その話に乱入するように一つ二つ投げつけて、次第に数を増やして、二人で長剣を投げ合い〆はサメラが天高く投げそれをすべてダガーを投げそれを同時に五つまとめて掴んだのであった。

「キャラバン一の芸達者サメラ・ルドルフ嬢に拍手!」

サメラは剣を持ったまま手を大きく広げ一礼し剣を片付けに奥にすっ飛んで、すぐさま違う衣装で現れ、命綱なしの綱渡り、そして命知らずの高飛び込み。踊りと脱出芸まで繰り広げ、一人芝居まで繰り広げ、最後にサメラはアイテムを駆使して放ち赤道直下のアガルトに雪を降らせたのであった。

その公演はひどく湧いて、賑やかだった。夜までつっいた公演は賑わい熱気が生まれ、人を一夜の夢へと変える。

「さぁさ、ご覧くだされ若旦那!」
「お止めください旦那様。」
「そなたは、それでいいかしら?」
「フン、やれるもんならな。」

声を変え、姿勢を変えて老若男女を演じ分け、長時間しゃべり動き、それでも彼女から笑みが崩れず浮かんでいる。
喜び、泣き、いつもの彼女からは見れないその笑顔を眺めていたら、芝居が終わり、キャラバンの終了を告げる声が聞こえて、そして、人がまばらに消えていった。

特等席と称され観客席最前列で、夢みたいな一時を見ていた。人が居なくなってしばらくしてから、テントに戻ればサメラは衣装のまま、料理の配膳をこなしていた。

「お帰り、はやく座れ。」

冷めるから。と指さされた先には人数分の皿。ここの隅で残りの仕事を片付けるから、先に食べてろ。と伝え、サメラはテントの隅で黙々と作業を始めた。

食事の最中で話すのは、先程まで見ていた夢現の公演の話ばかりで、サメラは小さく鼻歌を紡ぎながら繕いものを始めるのであった。


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