右の塔地下でサメラはカイナッツォに倒されたバロン王に簡素ながらの報告をした。 玉座に向かい、カイナッツォは倒した。王の間の手前にいる石像になった人間を頼む。と祈ってからサメラは目的地にたどり着いた。そんな頃にはもう夜だった。 「…パロム、ポロム。」 もっと強かったらお前たちを守れたのに。石になる必要もなかったのに。後悔ばかりが、降り積もりサメラは深いため息をついた。 「本当にごめん。」 あの戦いを思い返せばむなしくなって悲しくなって。俯いてサメラは唇を噛む。 脳裏には笑む双子達が見えてこちらに手を振る。 そして遠くで名前を呼ぶ声が聞こえる。強くなりたいなら、守りたいならと闇はこちらを向いている。 その声に身を任せれるなら、どんなに楽なのだろう。 その呼び声に、無意識に屁音をサメラが紡ぐ、最後の一音を出す前に後ろから声が聞こえて音の方を向いた。 青の鎧の騎士がそこにいた。 「竜騎士。」 「…泣いているのか?」 「悔いていた。」 もっと戦えるようにならなければ。と自分を思い知らしめていた。サメラは前にいる石になった双子達を見つめて、続きを紡いだ。 「自らの意志で動いた者には道具もきかない。」 「魔法でも駄目なのか?」 「あの時は賢者がいた。賢者がいても駄目ならば。魔法にも手はない。」 大事な時に悔いばかりだ。と深い息を吐いてサメラは、目を閉じた。 「ミシディアの長老には兵を走らせてる。だから。」 だから、きっと。大丈夫だとサメラは自分に言い聞かすように呟いた。 「…そうじゃなきゃ。私はずっと悔やみ続けるだろう。」 失礼する。そう言って、サメラはその場から逃げるように消えた。 その場に残されたカインは、サメラが去った方向をただ呆然と見ていた。 親友に似た色は親友とかけ離れた印象しか得なかったが、去り行くその姿はひどく親友に似ていた。 憂うような、悲しむような。例えがたい表情がセシルの怒っているときによく似ていた。 柔らかく月のような優しさを持つ銀とその意志と同じように真っ直ぐで揺るがない強かな銀と。 澄んだ空のような全てを受け入れる青と厳かな海のようにすべてを巻き込んで沈める青と。 すべてひどく重なって見えて、カインは首を傾げていた。 前 戻 次 ×
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