なんとかバロンにたどり着いてサメラの手元に使い慣れた武器達が帰ってきた。荷物を探してみたら、遠い昔に貰った武器がそこにあって、サメラはホッとした。 「サメラのそのダガーって不思議な形してるね。」 「…キャラバンの武器屋から貰った武器だ。」 分厚くて刃が刃として機能してないが。コイツはどんな武器にも姿を変える。 パキパキ音を鳴らして、刃を組み替えれば分厚い刃は次第に薄くなり刀へ。そしてまた組み替えれば双剣にと姿を変える。 「薄い刃は武人のプライド。刃こぼれしない剣を保つ使い方をしてこそ、立派な武人だと教え込まれた。」 「赤華のキャラバンで?」 「そうだ。」 細くしなやかな剣になっていたそれをサメラはもとのダガーに戻して荷物の中に入れる。 そうだ。サメラ、これ。と手渡されたのは手のひらに乗る赤い石。松明の光に照らされたそれは、静かにキラキラ光っていた。 「テラがサメラに。って。君が育ったところでこれを拾ったって。お母さんの色にとても似てるから。」 きっと何か関わりがあったんじゃないかな?って。言われて視線を手のひらに。手のひらの小さな石。風に乗りふと懐かしい香りがした。 「…老師と、そんなに話をしてなかったのになぁ。」 手のひらの石を荷物の中に突っ込んで、サメラの視線は落ちた。 「…死ぬのは私だけで十分だ。」 「サメラ?」 「何でもない。世迷い言だ。」 パロムとポロムに会ってくる。 踵を返して、部屋を出ていこうとするとその腕を掴まれた。 「サメラ?」 「なんだ?」 セシルとは。よく喋るが大体が旅のスケジュールが主で、体力のない子供に合わせるか、でよく話をしたが、セシルってこんな顔してたっけ?考え事に夢中になって、セシルがとんな買えで話をしていたか忘れた。 睫長いなぁ。とか余計なことを思案していたら、セシルの眉が寄った。 「…なんでもない。勘違いだったよ」 「そうか。私は行くぞ?」 引き止めてごめんね。という言葉を聞いて、サメラは深いため息を吐きながら、王の間一つ手前の部屋――石化した双子がいる部屋に足を進めた。 「報告も行っておくか。」 小さく思い出したようにそれを呟いてサメラの足は少し速くなった。 前 戻 次 ×
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