手首から肘に沿うように刃が入る。半月のような刃は骨で止めた。接触した勢いでよろけたが、刃はローザを貫く事はなかった。 切れた腕からだらだらと血が流れるのも構わずサメラはその刃を睨みつけて叫ぶ。 「サメラ!」 「はやくローザを退かせ!そんなに長くは持たない。早く!」 解ったとセシルがローザの拘束具を外し、距離を取るのを確認して腕に刺さった斧のようなそれを床に置いた。サメラ殿とヤンが寄ってきて慌てていた。 慌てるヤンを宥めながら、サメラは自分の肌着を破り止血帯として強く縛った。血はたくさん流れたみたいだが、神経やらは切れてない様子で、手早くまだ動く事を確認して周りを見回した。駆け寄ってくるいつもの二人とテラが見えず、知らない初老の男とバルバシリアと言葉を交わしていた男がそこにいた。 「…ヤン。パロムとポロム。それと老師はどこにいかれた?そしてこの男がどうしてここにいる。」 「サメラ殿…」 ストップの効果が切れたローザとセシルが会話していたのが、慌てていたのでサメラとそれの間に入る。ローザがサメラ、落ち着いてとなだめているが、セシルはしっかりとサメラの目を見て言葉を放った。 パロムとポロムは、バロンの王の間を出てすぐに僕らの身を呈して石になった。テラは、ゴルベーザに娘さんの敵を取るためにメテオをつかい、命を散らした。そして、そのメテオでカインが正気に戻った。そしてカインにここまで案内してもらってサメラ、君と会えた。 「そうか。わかった。サメラ…サメラ・ルドルフ。おまえが不審な動きをしたら叩き切る者だ」 「そんなことは二度と起こすか。」 「…行動には気をつけろ。闇は、いつでもそばにある。」 えぇ。闇も、風も、側にいるわ。 部屋の中に音が木霊する。音は塊となって風になり、小さく旋毛風になって、ほこに魔物が現れた。 ゴルベーザ様に手傷を負わせるとは。 だが、今はもうメテオの使い手も…。 魔物の言葉が終わる前にサメラはかけて、その肌に蹴りを見舞えば、油断していたらしいそれは大きくぶっ飛んだ。 「ゴルベーザにまた、一つ貸しができた訳だ。落ち着けるわけがなかろうに。」 親を、仲間を、知り合いを。奪われて、落ち着いてなどいれるか。 前 戻 次 ×
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