鼻につく魔物の匂いに、サメラは眉根を寄せた。 「おぉ、セシル無事じゃったか。見ぬうちに逞しくなったのぅ」 バロン式の敬礼をとるセシルをつつきサメラは、すっとそれよりも前に出た。言うべき言葉は見つかっている。 「…お前は誰だ。バロン王は死んだと聞いたが。」 「クカカカ、バロン王?誰だそいつは?」 そんな言葉を聞いて真っ先に動いたのはサメラだった。背中に背負った弓と野を取り出して、その手を射抜いた。 「質問しているのはこっちだ。答えよ。」 「クカカカカ、威勢のいい娘だなぁっ!武神事変。」 ストン。反対の手を矢が射抜いた。バロン王の手のひらからは血も出ない事にサメラは人知れず眉をひそめた。 「余計なことを話すならば、次は腹を射る。」 「姉ちゃん!。」 パロムが心配そうにサメラに縋る。サメラは気にする事もなく矢をつがえ、玉座の魔物を見つめる。射抜かれても平然としたそれは笑いながら、そんな奴居たなぁ。とこぼして、人の姿が揺らめいた。 「サンダー」 矢に雷を纏わせて腹を貫く。それでも王は血を流さない。 姉ちゃん。今日アノ日?とポロムが軽口叩くのをポロムが殴り黙らせた。足元でじゃれあうそれを無視して、魔物は言葉を続けた。会いたいか?会わしてやるよ!俺はスカルミリョーネみてぇに甘くねぇがな! げたげた笑ったそれは姿を変え、水を集め津波を起こす。 そこからサメラは無我夢中だった。隣が戦闘体勢をとる最中、サメラは言葉を紡ぎ出し魔法を起こした。 「…ウォタガ…」 手のひらに集まる水の玉は瞬く間に膨れ上がり津波をも飲み込み、そして消える。水の気配もすべて消し去る。 「これは…」 「あやつと同じ魔法!ティンクトゥラと同じ魔法じゃ…」 テラが、紡ぐ言葉に、双子が驚いた。姉ちゃん魔法使えないんじゃねーのかよ!こんな上級みたいな魔法みたこともねぇよっ。そんな悲鳴ににた叫びをするパロムの横をサメラが駆け出した。腰につけていた槍を引っ張り出して、重力を感じさせない動きで相手をいなしていく。敵の攻撃を足場にして、空に逃げて追撃をひらりと交わす。 「セシル、ヤン。いつまで立ち尽くしておる。」 テラの一言にハッとしてセシル立場構えて魔導師たちは呪文を展開し始めた。 前 戻 次 ×
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