ルドルフ | ナノ


魔を扱える。と言われ。
セシルと対なす。と言われ。
あのバロン王は何かを感じたのだろうかと、ぼんやり考えながらも、サメラは城の中をさまよった。ひたすら一本道だったので迷った。と言われるとなんだか違う気もするがサメラは冷たく少し暗いバロンを歩いていた。一つ階段を上り、外の景色を伺える通路にまで出ると遠くで剣撃の音を聞いてサメラは駆け足でまた違うフロアへ向かうと、そこには蛇みたいな頭を三つ持った半人の魔物とセシル達がそこにいた。

「…エアロ」

ただ無意識にぽそりと呟けば、小さな竜巻がふわりと浮かんでいた。出来た。なんて思った瞬間に火の玉はスイッと飛んで、魔物を目掛けて飛んでいった。

「何者だァ」

低い獣の吠えにサメラはハッとしてからピクリと肩を震わせて、柱の影に隠れた。見覚えのある小さな竜巻は、見覚えのある魔法であった。
肌が粟立つのが自分でもわかった。もう見れなくなった魔法が自分で放てる。

「…お母さん、頑張るよ。」

ギュッと自分の手を握りしめて、背中の武器が小さく鳴った。大きく息を吸って、サメラは地を駆け出した。
背中の武器を掴んで、魔物の蛇頭目掛けて振り下ろした。
鈍い手の感覚を覚えてサメラは、武器を手放し、魔物に触れた。

「エアロガッ!!」
「サメラ!?」

手のひらから生まれた竜巻は、蛇の魔物を切り刻みたその風に赤が舞う。息も出来ない嵐になった竜巻は触れた魔物の塵に変えて散らせた。
肩で息をしているサメラに駆け寄り、セシルは口を開く。

「サメラ熱は?」
「寝たら治った。」

問題ない。と言い切るサメラはそっと自分の手に目を落とした。お母さんの使い方はあぁじゃなかったけど、きっと優しい事に使いなさい。だなんて言うんだろうなぁ。とぼんやり考えながら、自分の手を開いたり閉じたりして眺めた。

「セシルもカッカしなさんな。何かあればまた面倒みたらよい。」

テラは豊かな髭を撫でながら笑い、部屋の奥にと歩みを進めた。
その後を「何かあったらすぐに言ってね」とセシルがついで奥に行く。あんちゃん待ってよ。とパロムが追いかけて、ポロムがサメラの手を引いて次の部屋へと歩き出したのであった。

小さな渡り廊下を通った先は
魔物の匂いを放つ王がニタニタ笑っていた。


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