ルドルフ | ナノ


町から城へと歩く。わずかな水の音が離れて、遠くで滝みたいな音がする。
清らかな水の匂いとサメラの嗅覚は違う匂いを拾い上げた。

「バロンはセシルが知る前から落ちていたか。」

ギリギリと奥歯を噛み鳴らす。悔いても仕方なく熱に魘されながら見た夢が時事的なのかもな。と思い至りながら、サメラは近くの木を見つけた。

「行くか。」

手近な木を選び、そこから軽々跳躍し木を登り、途中で木から城壁に移る。小さな窓枠に足をかけて、そこから二三飛んでバロン城に潜入した。

人の気配はなくくら、有るのは魔物の匂いと妙な気配であった。何か居るのかも知れない。セシルから聞いた捕らわれた技師。もしくはローザかもしれないと、判断してたどり着いたのは、誰もいない地下の玉座であった。

「来たかセシル」

そんな声が聞こえて、玉座に人が座り赤のマントと冠。紛れもなく王の風体を持つ何かであった。

「あなたは…バロン王か?」
「…おや、セシルに語りかけていたつもりじゃったが、お主の夢に語り継げていたかの。いかにも、私がバロン王だ。」

夢に語り継げていた。というフレーズで、直ぐに宿でみた夢のか。とあなたは気がついた。

「バロン王…。」
「私は亡き者じゃ、身構えなくてよい」
「…はぁ…」

セシルは元気かの?あれは優しい子じゃから、無理はしてないとよいのじゃが。

「セシルは強い。暗黒騎士を見つめ、試練を受け光を受けて、聖なる騎士になりました。」
「聖なる騎士か、私も昔憧れたものだ。よくぞ耐えた。…にして、召還師と共に来たのか?」
「…また近いうちにセシルと召還師を連れて来ます。」

そうかの。ならば、その時また来られよ。魔を扱えるセシルに似た者よ。

「魔は昔から使えませぬ。魔の加護も受けれぬ体質故に。使う事も、受ける事も出来ませぬ。」
「おかしな事を言う娘よの。己を見つめてみるとよい。力がお主を守りよるに。さぁ、時間だ。セシルを頼む。息子セシルと対なす者よ。」

まるで霞のように、バロン王は消えてった。夢を見てるんじゃないだろうかとサメラは錯覚した。が、手に持つ武器の感覚が夢じゃないぞと主張する。

「魔を持つ、息子セシルと対なす…て言うか息子!?」

あいつ王族だったのかよ。と言うか対なす意味が解らないとサメラはまた首を傾げた。とりあえず急ごうとサメラは今来た道を走った。


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