宿から帰り、腹を空かせた双子と飯を済ませて、買い込んだ物たちを荷物袋に入れて色々していたら夜が更けていた。遠くで水路の音がしている。 窓の向こうで二つの月がそこにある。昔夢で見た月に似ているなぁ。とぼんやり思い返した。どんな夢だったかと、記憶を掘り返していて思い出した。 「魔物が出てきて…それから。」 私を喰らった。幼い頃なんてまともに覚えてないのに、どうしてこんな事を思い出したんだろうと自己嫌悪に陥る。だれのせいでもってないのに。深いため息をついてサメラはぼんやりとその月をまじまじと見つめた。 その時期についてはよく覚えてない。もしかしたら飼われる前にそんなことが有ったのかも知れない。傷だらけの体に刻まれてるのはきっと痛々しい思い出ばかりだ。 「…今日は、鳴いてくれるのか…か。」 ゆめのなずなのに。はっきりと覚えてる違和感が脳裏にこびり付いて肌が粟立って自分を抱きしめるように目を閉じて小さく震えた。 「寝れないかナ?鳴かない鳥ヨ」 聞き慣れない声の方を見ると、窓枠に腰を下ろす魔物が一体。月の光に縁取られよくは見えないが首を傾げ此方を見ている。 「……お前は何だ…」 「…お前を倒すモノだ」 魔物がキシリと笑う、背後の仲間はは起きる気配がない。ならば、闘うしかない。拳一つだが、何故だか自信に満ちている。 腰を押していた床に手をつけて、ぐっと力を込めて魔物の腹に頭突きをかますように踏み込んだ。魔物は油断していたみたいで頭突きをまともに喰らい共に窓から落ちた。 魔物がクッションとなって、サメラは着々し、そのまま腕の力で後ろに飛び、た際に魔物と距離を開けて間合いを計る。ジャリ、ジャリと音を鳴らして距離はおよそ6メートル。闘うしかない体制を取り繕うために、片手で掴める石を指の間にねじ込んで、即席武器として扱う。 「昔かラ、はよく鳴かない子だったのにネ」 「奇妙なしゃべり方の知り合いはいないが?」 「お前が覚えてなイだけだがね」 サメラは構えたまま眉根を寄せた。 「私の知らない何かをお前が知ってるのか?」 「我は我シカ知らないがな」 「無理やり吐かすまでだ」 睨み合いを止めたのは魔物のほうだった。低く構えて四足で地面を蹴る。鋭い爪でサメラを襲う。上半身をひねり間一髪で交わした。牽制するように蹴りを入れて、手近にある木に逃げる。 前 戻 次 ×
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