ルドルフ | ナノ



荷物を詰めて旅の支度を済ませて彼らはデビルロードを渡る。初めて通る道にサメラは、胸を高鳴らせていたのだが、こんな道だと思わなかったと一人後悔した。酷く後悔した。

バロンとミシディア間を結ぶ通路。いつからあるのか、何のためにあるのか、理由すらも何も知らない。ただ先日の戦争のためにミシディアが道を閉ざしたと聞いていた。なにがデビルなんだろうて思ってた自分が甘かった。
人に反応し重力を無効化し、弾き飛ばされるような勢いでサメラ達は動かされた。

「レビデト!」

ふわりと浮いていた体が、地面に叩きつけられた。風に流されたせいか、酔ったらしく吐き気がこみ上げる。必死に飲み込みながら、世界は回っている。「姉ちゃん大丈夫か?」なんて声をかけられたが、返答する余裕もなくただサメラは頷くだけであった。

「…酔った。」
「酔った…。」

同じタイミングで同じ言葉が、聞こえてそちらを見れば、ポロムがセシルを案じていた。

「…外の空気を吸ってくる。」

逃げるように外に出れば、まだまだ明るいバロンがあった。遠くから聞こえる水のせせらぎ。街のはずれにあるからか微かな喧騒と人の住んでる匂いであった。
昔にバロンにも来たなぁ。と思い馳せていると、胸が痛み、藪に背を預けて息をつく。

救いたいものは沢山あった。守りたくても守れないものばかりであった。お母さん、赤華の集団、ローザにリディア。そして沢山。

大切なものほど、呆気なく指先からすり抜けていくから、私の手が血まみれてるからだろうか。と自分の手を見つめていると背後から声が聞こえた。聞き覚えのある声だが、バロンに知り合いは居ない。誰だろうかと、草藪ならソッと顔を出して当たりを伺えば、少し離れた先を歩くのが見えた。
鈍い金の髪とバロンでは見ない拳法着。バロンにいる可能性まで拾い上げれば答えはすぐさま出た。

「…ヤン…?」

なぜ、隣にバロンの兵が居る…?。サメラはヤンをみつめたまま可能性を展開する。

洗脳の根元を思い返しながら、疲労が根元の洗脳だろうか。精神干渉によるなにかなのか。と羅列せど、わからない、ただ簡易的な記憶喪失なのか。可能性が疲労から始まる洗脳が打倒か。と適当に狙いながら、サメラはヤンがバロン兵を連れて宿に入って行くのをみていた。



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