「サメラ!」 「戦えセシル!」 破裂音を鳴らして、ゾンビーたちを牽制する。そうだったとセシルも思い出したように剣を握りなおした。 「…残弾もってくれよな鉄砲…」 抱え直し照準を睨む。牙を向く魔物に遠慮なく、鉛玉を喰らわせる。慰め程度に火薬の中に薬草の元を詰め込んだが効果は有るのだろうかと、心許ない。 爆発音を鳴らして、鉄の玉は飛ぶ。火線を走らせて、まっすぐ敵に飛んでいく。破裂音を鳴らす中で、ぐしゃり。とひしゃげた音を聞いてサメラはため息をついた。 「…あぁ、こっちにも召喚させたんだな…」 仕方がないと胸元から小さな銃を取り出す。三発をリズミカルに吐き出して、胸元に終い込む。崖から落ちて行ったゾンビーは登れないだろう。新たに召還するならまた叩き落とせばいいだけだ。 「まぁ、うちの武器屋は何でも作ったなぁ…よくやるわ…」 エブラーナで見た武器を作るだなんて。 遠い過去に思い馳せても、そんな人ももう死んでしまっているのだ。残された残り少ない武器たちを思い、サメラはそっと息ついて照準を睨んだ先に魔物が居なくなっていた。 「ねぇちゃん、終わったぜー」 橋の向こうでパロムポロムが手を振りサメラの落ちた穴をよけて、こちら側に来る。 ゆっくり来いよ。と促して、サメラは今し方使った銃やら武器の手入れに取りかかる。筒口からの煤を払い、火薬を詰めて銃弾を入れる。次にすぐに使えるようにするためだ。 手早く準備していたら、視界の隅で何かが蠢いた。さっきの白い塊が、微かに動いた気がする。首を傾げて見つめていたが、セシルたちが橋を渡りきった瞬間にそれがはっきり動いた。 「お前ら伏せろ!」 鉄砲を構えて照準を睨み三発。倒したと思った魔物がよたりと動いた。それは高く跳び一気に橋の向こう側からこちら側側にやってきた。急いで戦闘体制を展開して、それを迎え撃つ。 「フシュルルル…」 真の姿を見たからには生かしておけん。呪い殺してくれる。 そんな音からそれは変化した。巨大化。異質化。変身。言うなれば全てがあたりですべてが違う。 肩幅ぐらいの牙と、ズーみたいな巨体で四足。腐った臭いを漂わせながら、牙の間にある顔がずるりと落ちた。地に肉が落ちる前にサメラは足元の子達が見なくていいようにそっと、前に出た。一歩出て、それから駆けた。 前 戻 次 ×
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