「ねえ、テラ。どこかで、セオドールなんて子、見たら教えていただいても?」 「…どうかしたのか?」 「多分、サメラの兄にあたる人だから」 なにがどういう経緯で捨てられたのかは気になってねぇ…。今でも解らないのよね。私はサメラの親も知ってるわ。でももう亡くなっているはずだし。兄が##name1##を捨てたのも何か理由が有るはずなのよ。だからね。見つけたら、うちにおいでって伝えてあげて。何か理由があるはずだから。…まさか…あの人が……ないわね…いえ、なんでもないわ。気にしないで。 「セオドール、それから銀色の弟とサメラ。…いえ」 彼女の名前は別よ。サメラは私がつけたの。私は産んでないし、本当の名前は知ってるけれど、私からしらせるのってなにか違うと思うから。生き別れた兄から、知りたいじゃない?、いつかあなたの家族が見つかるように。兄弟が見つかるのが一番早いけどね。 森に張った呪いのおかげで、私も出られないのよねぇ。頬に手を当てて困ったなぁと白々しく言い切ってる。困ったなぁと風合いも全く見せずに、淡々と読み上げながら、確実にテラを押さえつけにいってる、 「こまるなぁ。あの子、どこかでおなか空かしてるかもしれないしねぇ」 「…わかった、わかった!見つけたら言ってやるわい」 ふふふ、そういう賢者様らしさって好きよ。と言う姿に、説得力のかけらも何もない森の賢者であった。 それ以来、会わなくなり、訪ねなくなり。そして、森で光がはじけた瞬間を見た。何が起きたのかと疑問すら湧いた。 娘を置いて、駆けて行った先は、草の根すらない広大な更地だけで、砂礫の大地だけが広がっていた。 「…フレア…か…」 焦熱魔法を使う程の厳しい敵だったかと悟らせると同時に彼女の家が有った辺りも訪ねたが、そこも何もなく、ただ広い砂原だけがあった。 テラは過去の記憶に目を細め、色々あったなぁ。と感傷に浸っていたら、砂の間に、きらめく何かを見つけた。 手のひらぐらいの大きさのそれを拾い上げ、あぁ。彼女の髪の色だと、思えば、口元が歪んだ。 どこを探しても何もないと、どこを探しても、あんな色を見つけれないと。過去のように彼女と彼女の子すらも思い出せなくなるのかと。 テラは、ずっと叫んでいた。 どうして彼女だったのだと。 あの森の賢者が森だった場所で亡くなったのかと。 彼の心はずっと叫んでいた。 なにがあったのだと。 前 戻 次 ×
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