ルドルフ | ナノ



そのまま休憩所で一夜を明かして朝になった。サメラが合流してから野営と言えば、合流する前に買いだめしたと言うコテージやテントを使っている。まとめ買いをしてるから、気にするなと持ち主であるサメラが一番使ってないのをセシルは知って罪悪感に苛まれるのが、毎日の朝であったりする。

そんな罪悪感からかセシルが目を覚ませば周りに誰も居ない広々とした空間だった。
外から賑やかな声が聞こえて、顔を出せばサメラはキラキラと湧き上がる不思議な光に包まれて、そこに立っていた。

「…ふむ…不思議なもんじゃな」
「…昔からこればかりは出来ないもので…」
「ほんと不思議だよなー、ねぇちゃんから魔法の気は感じるのになー」
「全く使えないのも不思議ですわねぇ…」
「何の話…?」
「おはよう、セシル。」

くてんと首を傾げるセシルが輪の中に入れば、サメラを包んでいた光は止まり、サメラは首を鳴らした。

「サメラさん、魔導師としての素質をお持ちなんですが。」
「基本の概念や詠唱やらは昔にキャラバンで教えて貰ったんだがな、どうにもこうにも…兆候も何も、全く使えなくてな。そう言う話をしたら、老師がな。」

調べてやる。と、仰るので。こうなった。とサメラは肩を回しながら、言葉を吐いた。

全くもって不思議なもんじゃ。魔力に満ちておるし、基礎魔法の心得もありながら、詠唱してもうんともすんともなりやしないのは、初めてじゃ。まるで、何かに抑えられてるような、そんな感じもするのぉ。ケアルが効かないのもこのせいかもしれぬのぉ。
うなりながら腕を組む賢者を落ち着かせて、サメラは飯の支度をする為に断りを入れた。

「まるで一つの呪いのような。」

呪い-majinai-は呪い-noroi-に似て通ずるモノ。母ティンクトゥラの愛や、思考が蓋となって魔を封じ込めてるようにも…いやはや、考えすぎかの…。
一人呟くテラは、ブツブツとまだ考えているのであった。

「…家族の概念、……遺伝子、と運命とは……誠に不思議なり…」

髪の色は家の者との繋がりで最大の情報であると言うが、銀は、今まで見たことががなくての……育ちが別なのは腑に落ちんが。…セシルとサメラが家族だったらいいのぉ。とテラの目が昔を思い出していた。娘アンナと訪れたトロイアとダムシアンにある、森の賢者の家を。




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