小規模な戦闘を二三行い、山頂一歩手前ぐらいで何かが聞こえたような気がした。 気のせいかと判断して、サメラは聞こえてない体を装ったが、無駄で、隣のパロムが「なぁ、ねぇちゃん。今何か聞こえなかったか?」と、聞こえたのかよ。突っ込みを飲み込んで、なんかいるなあ。と適当な返事をして、気配を探るが何も居ない。気味が悪い。と思ってまた山を登れば、パロムが服の裾を掴んで、呼んだ。疲れた顔色をしているが、時間帯を考えてみれば、答えは解った。 「なーねぇちゃん。」 「…後少しで休憩所がある。そこで飯でもするか。」 「流石、話が解る!」 飯、飯!と疲れてた顔色をしてたとは思えない程元気になって山を登りだした。最後尾にセシルとサメラが残されて二人で顔を見合わせる。 「元気だな。」 「ほんと、羨ましいね」 「…寝てるか?」 「あははっ」 目の下の隈が薄くできてる。寝れてないんだろうな。と思いつつ、曖昧に笑うので、この話題に触れても仕方ない。 「サメラは、最近寝てる?」 「まぁな」 そこまで深い眠りはしてない。戦場で寝たりするので、それが癖みたいになっていた。遠くの魔物の声で目を覚まし、近くの息使いでも目が覚める。たまに夜の見張りをする奴と会話をしてまた眠る。街の宿場で泥のように眠るのは、野営だからこその習慣になった。 「気のせい寝否の番してたのに。」 「野営は慣れてる。」 気にするな。お前は寝ろ。 一番の頭だろ。弱気になるなよ。とサメラはセシルの背中を叩きながら二人で山道を歩く。 「ね。サメラ。この先には何があるの?」 「…何もない。」 騎士になりたくて前は登ったんじゃないしな。欠伸をこぼしながら、昔を振り返り呟く。「扉の開かない祠が一つ。それ以外は何もないさ。もう何年か前の話だがな。」と銀の髪を揺らしていたが、邪魔になってか鎧にしまい込む。 「仕舞うの?綺麗な髪なのに」 「邪魔だ。それに」 ――この色が嫌いだ。 吐き捨てるように言ったその目は酷く哀愁溢れ悲しみだけが映っていた。 「もったいないなぁ。僕が切ろうか?」 「…不器用だろうが」 「ローザより上手だよ?」 「比較対照を改めろ!」 セシルはよく旅が出来たな。と皮肉を込めれば、あの時はカインがいたしねぇ。っセシルが思いはせた。それを聞いてサメラはあの男を哀れに思ったのだった。 前 戻 次 ×
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