また夜が明けて、試練の山にたどり着いた。山は酷く穏やかな表情をしているが、時希に獣の声がするのを聞いて、サメラは試練の山を仰ぎ見ながら、眉をひそめた。 「…なんか、いるな」 なにかは解らないが。まがまがしいのか、懐かしいのか解らない何かがサメラの思考を絡めとった。懐古感と、畏怖するような何かが背筋を走った。 「……」 「サメラさん?」 「あぁ、行くか。」 左にポロム、右にパロム。サメラの前にセシル。何かあっても臨機応変に対応できると、気づけばこんな配置で山登ることになるとは…ましな組み方を提案したが双子が折れずこうなってしまった。 「昔に上ったが、ここには何もなかったが…本当にあるのか?…」 「ねぇちゃん登ったのかよ」 「団長に言われて…なぁ。」 なんだかんだ、いろいろな所に登らされたし。遠い目をして振り返れば、頭の中に母の姿を思い出した。なぜ思い出したのかと考えてたら、隣から不意に質問が来た。 なぁ、ねぇちゃん。ねぇちゃんの小さな頃って、何してたんだ?と。子どもの洞察力は鋭いからこそ、そう思ったから聞いたのだろう。 「話したことなかったか…覚えてない。キャラバンに入るぐらいからしか覚えてない。」 どうやって生きてたか。なんて、ほとんど。な。けど、強いて覚えてるのは。 「―――森の賢者が、育ててくれた事しか、覚えてないかな。」 母である森の賢者が生きてるのかも、解らない。そこから一時的に記憶があまりないのだから。 「賢者様…ですの?」 「森の賢者、ティンクトゥラ。それが、母の名。どんな顔だったかも正直自信がない。」 生きてるかも死んでるかも知らない。だから、すべてが終わったら調べようと思ってる。誰か、まだ覚えてる人が居ればいいんだけどな。 こんな話はもういいから、はやく進むぞと、話を切り替えサメラは歩き出す。それに倣って双子がサメラのペース似合わせるために駆け足でサメラの横を位置取ったのであった。 「ねぇちゃんだっこーっ!」 「はいはい。」 「サメラ、手伝おうか?」 「…セシルお前、無理だろ…」 「大丈夫だよ。問題ないよ。」 「…いや、無理だろ」 だって、お前、兜やら鎧やら、トゲばかりで刺さるだろうが。 前 戻 次 ×
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