そこは酷い場所であった。 飼われていたあの時と同じ匂いがサメラの意識を、よりハッキリとさせた。暗くて湿っぽくて、狭い、檻の中だと、理解して、静かに腰を下ろした。待っていたら、必ず来る。昔を思い出せば、すぐに足音が聞こえて、暗い世界に光が入る。 呼ぶにも、名前も知らなかった。 飼う飼われるの間柄に、そんなものは存在しなく、逆光に見えるそれは、人でない姿だけが見えた。 団長が立っていたはずなのに、そこに黒い獣だけ。輪郭しか見えないのに酷くなにかに訴えかけるように、何かを感じる。 「今夜こそ、お前は泣き叫んでくれるの?。」 人語を喋るとは思わない口が、にたりと笑ったように見えた。部屋の入り口で立っていたそれは、音もなく部屋に入り込みサメラを蹴飛ばした。 はっ、と目を覚ませば、心臓がドクドクと脈打って、寒気と照りつける太陽の熱で奇妙な感覚に襲われた。確か、あの夢は昔に見たような気がする。いつだったかは覚えてないが、ちらりちらりと断片的に見た記憶が残っている。 気味が悪いとサメラはため息ついて、頭の隅に追いやった。 空に雲。泡に水音、海の匂い。 定期的に波を受けて単調なリズムにつられて眠ってしまったらしく、いつのまにか漂流して、浜辺に流れ着いた。 舌の根に、仲間の名前を乗せてみたが、返事は無く、サメラは仕方なく立ち上がり歩き出した。すこし高い場所になってる丘に登れば、小さくても町が見えるだろう。と検討をしながら、船でみたい白い尻尾について考えてみたが、そんな魔物なんて知らない。 黙々と考え込みながら丘陵の頂点に登りついた時だった。 「サメラ?」 急に名前を呼ばれて振り返れば自分の足跡をたどる黒の鎧が駆けていた。 「セシル!」 「サメラ、無事だったんだね」 「板があったから助かった。他の奴らは?あの白い魔物は…」 「わからないんだ。ただ、わかるのは一つ大海原の主が暴れて船が壊れた。仲間が生きてるかは…」 大海原の主。あぁ、あれが。と言われると言われると、納得ができた。幻の獣。その王が大海原の主、リヴァイアサン。 「海原の主が、どうして…」 船なんかを。と思ったがふと頭に召喚師が思い浮かんだ。まさかな。とは思いたいが、あまりに関連性が高すぎる。 セシルとサメラは頭を抱えてた。 「…あー…」 「とりあえず無事だろう。」 前 戻 次 ×
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