ベッドから上体だけを起こして、伸びを一つ。体の節々が悲鳴を上げて、叩きつけられた跡はかすかに痛むがまだいける。戦える。骨は折れてない、何度も叩きつけられたのに、打ち身や痣ばかりになってしまったが、エブラーナから習った、受け身だかなんだったかが役にたったなぁと、首の骨をならしながらそう思っていると、セシルが肩の怪我を見つめて言葉を言った。 「サメラ、その傷。昔のだよね?」 「…昔、飼われてた時の傷だ。」 「かわれる?」 「家畜・飼育とでも言い換えたら解るか?」 「…ごめんサメラ…」 重くなるから。止めだ止めだ。と話をぶったぎってサメラは手を伸ばし荷物の中から鎧をつかみ手繰り寄せる。フリーズしたセシルに、うちのキャラバンは異端の集まり、どこかが欠けた人間の集まりだからなぁ。 「戦闘集団なんていうがまともに戦えるのは私とあと三人だし。な。」 私と団長とその奥さんとキレやすい商人だけだし。言葉を放ちながら、するりとベッドを抜け出して、部屋を出る際に、今でもまぁ足りてないが、キャラバンに入った時、私に欠けていたのは心だったがな。と残してサメラは部屋を出て甲板に向かい歩く。 そこでふと気付く、団長はなにが足りなかったんだろう。と。四肢も、五感もあったのだ、首を傾げたが、今じゃ答えを知る人も居ないから、その答えには辿り着かない。 「サメラっ」 ドタバタと出てきた部屋からセシルが顔を出す。まだ寝てなきゃ駄目だよサメラ!とそれを言うために部屋にまで出てきたのかと、思いながら私は問題ない。折れてはないからな。 「痛みにはある程度慣れてるからな。」 おれてなかったら不自由ないときっぱり言うためにサメラは、甲板にでたらめ体を動かしたいと言って、また先に歩き出した。 「もう、手合わせは無しね」 はいはい。と生返事して、サメラは甲板に出たら半泣きのリディアが膝に飛びついて来てリディアからの説教、と言う名の泣き脅しが始まるのであった。 「サメラ、なんであんな無茶したの!ケアルもかけても意味ないんだから、気をつけてよね!」 幼女に叱られ正座するサメラ。逆転関係がおかしくて船員のほうから、プッと笑う声がしたのでサメラはただそちらを睨みながらただただ耐えるのであった。 「サメラ、こっち見る!」 「あぁ…」 前 戻 次 ×
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