ルドルフ | ナノ



身軽さを考慮していたら、まさかこんなところで傷を負うなんて、直ぐに身を起こせば追加の攻撃が眼前まで来ていた。

「ッチ!!」

舌打ち一つ鳴らして、壁ギリギリまで引きつけてから避ければ攻撃が壁に当たり消えた。大刀を回収する間にヤンが仕掛けていたが、返り討ちに合った。戦えるのは私しか居ない。ゴルベーザを見据えて、大刀を握る手に力がはいる。

「カイン。クリスタルを手に入れて来い。」
「はっ」

戦わなければ。まだ戦える。私が守らなければ。また何も守れないのは、嫌だ。もう、キャラバンのように無くしたくはない。仲間だと、言える人を。

「まだ……まだだぁっ…ゴルベーザっ!」
「また同じ技をかけてやろうか。」

また頭から地面に叩きつけられて、血を吐く。口の中も切れたみたいで、頭がフラフラしてきた。それでも怯まずにまた飛び込み投げられる。武器を変え、手を変えて、それでも臆さずにゴルベーザに飛び込む。が、虚しく弾き飛ばされる。そして、大刀を投げ捨て、昔貰った武器を握る。

「カイン。もうやめて…」
「下がるんだ、ローザ。」

バロン出身らしいの三人のやり取りがゴルベーザの耳に入ったのか、ほう。とローザを見つめている。

「そんなにこの女が大切か?」

ならば、この女は預かっておこう。
そう言ったゴルベーザのマントの中にローザが消える。恐怖が色濃く浮かぶその表情がゴルベーザの闇色のマントへ消えた。
頭の中の、なにかがぶちぎれる音がした。脳裏で誰かが囁いたような気もした。

戦え。と。

ゴルベーザの名前を怒鳴るように吐き出して斬りつけようとしたら交わされ、武器を叩き落とされる。すぐさま足技に切り替えようとしたが、間に合わず首を捕まえられ、気道を抑えれる。蹴るには届かず、爪を立てても相手は鎧で、効果もなく。チカチカと目の前が変わってくる。
もがけどもゴルベーザの手が外れることもなく、ギチギチと尚も締まる。ヤン達が立ち上がれど返り討ちにあう。ブラックアウトしていく意識の中で、聞こえたのは二言。

「お前たちとはまた会いたい。」
「また追って連絡する。」

ゴルベーザのそんな言葉を聞いて、意識をなくしたサメラは床に叩き落とされたのであった。


白魔法も効果をなさないサメラが次に目を覚ましたのは二日後のベッドの上であった。


×