そして後退に後退を重ね、サメラ達はクリスタルルームまで下がった。道中、ギルバートが転倒するトラブルもあったが、、サメラが槍をなげ牽制して事なきを得た。これ以上退くことも出来なければ、動くことも出来ない、さてどうしるか。とサメラは考えたが、何も浮かばない。 背中の大刀を握りしめ、チラリとクリスタルを盗み見た。盗み走れど、見つかりやすいか。サメラは息を吐いて、唯一の出入り口を見つめた。 足音が遠くから聞こえる。 「…誰か来るぞ。」 「ゴルベーザか?」 閉めた扉が爆発により吹き飛んだ。砂誇りの立ちこめる中、向こうから姿を表したのは蒼鉄色の鎧を纏う武人だった。 「カイン…!無事だったんだね。」 小走りでサメラをすり抜けて、セシルが男の横に立った。同郷の仲間でセシルのこの反応だ、おそらくこの間のミストの地震ではぐれたのだろう。 「共に戦ってくれるよね?」 「あぁ、」 男の声色は酷く暗い。ゆらりと床を叩いた槍を持ち、槍の穂先をセシルに向けて男は攻撃を仕掛けてきた。 「カイン!」 「戦うのはお前とだ!」 眼前の行動に理解が全くついて行かない。セシルが嘘をつけるような人間でもないのは、数日間のやり取りが証明している。あの浮かれ様なら、友で共にバロンを出たまではわかるが、どうしてこうなっているんだ。理解できない光景に首を傾けていたが、セシルの剣が飛んだ。 「今、楽にしてやろう」 男が槍を構え、振りかざそうとした瞬間、静止を命令する声と共にローザとリディアがなだれ込んで来た。 「カインやめて…!」 叫びを聞いて、男は頭を抱えた。事情もへったくれも知らないサメラ達は、ただ静観していた。 三者を見つめ沈黙を保っていたら、どこからともなく「何を迷っているカイン。」とクリスタルルームに声が響く。 扉の向こうからゴルベーザが現れた。 「ゴルベーザ…。」 「まだ生きてたか。武人革命。まだ私に戦いを挑むつもりか?」 「仲間の仇はとれてないからな」 カチャリと大刀の向きを変える。しっかり握って、地を蹴った。刀がゴルベーザに当たる前に、ゴルベーザは魔法を使い防ぐ。衝撃を利用し距離を開けて、また襲う。大刀を放り投げ、腰につけてた武器を取り出そうとしたら、ゴルベーザの追撃魔法にやられ地面に叩きつけられた。 前 戻 次 ×
|