バロンを出発しミシディアを越えてダムシアンへとキャラバンは動く。サメラは操舵席にいる団長の隣で、大刀を抱えながら、目を閉じていた。遠くの木々の音を木々、その中に違う音を一つ見つけた。魔物の吠声が聞こえる。ゆるゆる目を開けば、団長が口を開いたら。 「頼むぜ、サメラ」 「…」 立ち上がり駆け出して飛んだ。大刀の柄をつかみ、真横に凪払えば木々を痛めることなく、赤が散る。 「団長ーしめたー」 今晩はブリツェンスペシャルだな!。と団長が笑うのでサメラはほっとしたように胸を撫で下ろした。 団長は嬉しそうで悲しそうだが。食べれることはありがたいことだ、とサメラは目線で訴えた。 「ブリツェンに調理は任せたが、味付けはサメラお前がやれよ。」 味音痴に任せてうちから食中毒なんて勘弁しろよな。とつぶやきを聞いてサメラは片手を上げて、幌の中に消えてった。 結構強くなってきたなぁ…アイツ。育てた甲斐あるよな。 細くすらりと伸びる四肢にほのかに幼さを残すも、大人びた表情と異世界から来た何かと思える銀を持つ彼女はまるで行商で行き交われてる娯楽品にも見え、時希にあれは幾らだと問われた時は驚いたのも最近よくある光景になったりしている。 人間は酷くも脆く。そして哀れだと団長、ルドルフは思う。世界を見て、己の欲を満たし、ひどく底の見えない生き物だともルドルフは知っている。 「あいつはどんなふうに生きて行くんだろうな。」 誰かに語るような口振りでルドルフは目を細める。彼の先になにかが見えているような雰囲気を纏いながら、サメラの入っていった先を見つめる。 「…そろそろ旅立たせても良いんだけどな。」 今からでも遅くない。今から名前だけ一人歩きさせて漸く名目がつくのだ。だから、やってみるか。とルドルフは膝を叩きサメラの名を呼ぶ。鈍い音がしてからサメラは現れるのであった。 「はい?」 「お前、一人旅してみないか?」 自分で金を稼ぎ、世界を回ってまた落ち合う。お前の成長も伺えるし、お前自身を世界に売り込んでこい。 「は?」 「は?じゃなくて、サメラ」 「は?」 「早く、行ってこい」 「確定で話を進めないでください。団長」 「ポーション3つぐらいなら持っていって構わないからな」 抵抗する間もなくサメラは荷物一式と共に外に放り出された。 前 戻 次 ×
|