ルドルフ | ナノ



隣の部屋に##name_1##が入ると背後からため息が聞こえた。同じ立場なら、悩むだろう。誰に言うか、どう対抗するか。聞こえる声に、聞こえないふりをしていくのか。先ほど会話をしたカインという男あれは、どういう風に対処をしたのか、その対処であっていたのか、根元になる術者は同じなのだから、聞く可能性は高い。だから、聞いてみたのだが、収穫はそれほど多くなく、仕方ないと
思考を止める。腰に備えた鮮やかな色の薬たちの中に三種の毒薬を仕込んでいる。洗脳の妨害として、薬を使った痛みによる遮断を##name_1##は選んだ。ほかの遮断方法だと感づかれ戻される可能性が高いからだ。
だから、ミシディアでプロムから渡された荷物の中に、そっと毒薬の原料を指定し、ポーションを作るという名目で、毒薬の精製に成功していた。その薬たちを撫でてから、何もないといいんだがな。とこぼして、部屋の中心にあるクリスタルに手を伸ばした瞬間、脳裏に燃える映像が見えた。炎を吐く銀竜とそれを喰らうように吠える黒い竜が絡み合い、炎や氷の魔法を派手に打ち合い魔物の間をすり抜けていくゴルベーザと、フースーヤがそこにいた。彼らもまた強行するように歩いているのか、苦戦を強いられてるのか体中に傷を作っているように見えた。そんな映像から、映像が変わって仲間が崩れ落ちていく映像が見えてくる。腐臭漂う中に、銀や金が床に転がっている。目を覚ませ!と叫ぶ声が聞こえて、意識がふっと元に戻る。

「ぐっ…」

映像と同時にぎりりと頭を締め付けるような痛みがやってくる。立っているのもおっくうな痛みに膝をついて耐えて、その痛みと当時にゼムスの洗脳の一種だと把握して、急いで腰元に備えた薬を一気に煽る。燃えるような味を一瞬感じて、すぐさま水で流し込む。独特の苦みが口の中に残ったが、津波のような勢いで映像が引いていき、瞬く間に見えなくなってほっとする。まだいける、まだいけると自分を鼓舞して、よたりよたりと立ち上がり、部屋の中心のクリスタルに触れて飛べと念じる。

「飛べ!」

声に従うかのように、まばゆい光がこぼれて一瞬にして##name_1##の姿は消えた。
ふわりとした感覚の後に両足が地面につく感覚がする。ふっと目を開ければ、館の中とは思えない洞窟が目の前に広がっていた。

「##name_1##来たのね!遅かったじゃない」
「…あ、あぁ。」

転送陣から出て!と腕を引かれて陣から出ると、胸の中が焼けるような感覚がして、薬はきちんと働き出していると考える。しばらくしたら解毒薬を飲み、またこれで時間を稼げるだろう。
セシルとエッジの姿が見えないので、問いかけると、二人はついさっき先を見に行くと出て行った。全員がこの部屋に到着するころに戻る、といっていたので、もうすぐ来るのだろうと思い、一旦薬で映像で擦り減っていく体力を回復するべく仮眠をとっておこうと##name_1##は部屋の隅で目をつぶり、意識を飛ばすのであった。やすらかな寝息を立てるころにカインもやってきてセシルたちも、そろそろ帰ってくるだろうと思いローザは##name_1##に声を投げかけた。

「##name_1##…あら、寝てる?」
「珍しいね、##name_1##がこんなに寝てるなんて。」

私の小さな時は眉間に皺をたくさん飼っていたんだけれど。最初に会った頃ってずっとそんな表情してたよね。とリディア##name_1##の寝顔を見ながらクスクスと笑う。今でもあんまり扱い変わらないんだよねぇ。とこぼせば、幼いころのリディアを思い出すと、あれは家鴨の親子のようにいたことを思い出して、ローザもつられて笑う。

「たぶん、##name_1##起きたら無茶するから、このままセシルたちが戻ってくるまで寝かせておきましょ」
「そうだね。そうしよ。」

もうすぐセシルたちも帰ってくるからご飯の支度でもしましょうかね。と言うローザに、賛同しリディアも手伝うというのはいいのだが、彼女たち二人が料理ができないということを誰も突っ込む人物が不在であった。それらが起因して事故が起きた。そしてそのあとは、察さないでほしいし、本件で食事ができる環境がありがたいことだと##name_1##は身に染みながら胃腸薬と偽った解毒薬を飲み干すのだった。


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