一方変わって、野郎たちは大きな道場とも言える場所で、模擬試合を繰り広げていた。カインは槍を手にエッジと刃を交え、潰した刃がぎちぎちと音をならす。やるな、と小さく呟いて石突をぐるりと回してエッジと距離を開ける。懐に潜り込もうとしたエッジを牽制して構える。 「おめえも強ぇな!」 「そういうお前も、な!」 会話をしながらも、攻撃は続き、言葉尻が勢いと共に強くなる。カインは隙を見つけて叩こうとしているのだが、そんな隙すら見つけられず歯噛みした。向かい合うエッジを盗み見れば、師に似た笑みを浮かべ足払いがかけられる。着地に僅なバランスが崩れ、すかさず狙われる。崩れながらも相手を蹴り距離を開けようとしたが、愛用している武器が弾き飛ばされ、カランカランと音をたてて床に、転がった。 「さすが、エッジもカインもすごいよね。」 ほら、休みなよ。とセシルはピッチャーを囲みながら、一息入れようと促す。エッジの手を借りて起き上ったカインも、カインから一本取れて満足しているエッジも満足げに腰を下ろした。 「どんだけやっても、あいつに全然かてねーの。いい勝ち方ねえのかな。」 「うーん。三人でとびかかっちゃう?」 「んな狡いやり方で勝っても嬉しくねーっての。」 だよね。と相槌を打ってやれば、カインも頷いて賛同する。そんなセシルとカインを視界にいれず、俯いたエッジが「セシル。あんがとな。」と吐き出した。え?とセシルがエッジを見たが、手元に視線を向けられているので目は合わない。俯いているエッジは手持無沙汰に指を組み、親指を回したりしながら、言葉を選ぶ。 「俺と合流してから、あいつの表情がやわくなってんの。」 あいつ、が誰を指しているのかは、言わずサメラだということが一同が理解をした。そんなのにも構わず、エッジは言葉を選びつつ迷いつつ言葉を放っていく。 俺の知ってるあいつなんてずっと、怒鳴っているか無表情だったんだけどよ。合流してから、なんか笑ってたり。嬉しそうだったり。いろいろあいつにもあったんだろうけどさ。たぶん、あいつを変えたのってお前たちだって俺は実感してんだ。キャラバンがなくなって、帰る場所もなくなって、身内が全然いなくなったってのに、あいつが笑ってんのも、セシルのおかげなんだろうな。って俺はおもってんだ。アイツの兄貴分であって、弟子であってる俺はアイツを笑わせることすら無理だったんだけどさ。セシル、お前がアイツを変えてくれた。あんがとな。 「僕は、何もしてないよ。僕もサメラによく助けてもらってるから、変わっていったのはサメラ自身の力だよ。きっと。」 きっと。その力を支えてるのも僕たちなんだろうけれどね。とセシルが笑う。そして、たぶんサメラも気づいてないんだろうし、無茶もするからカインも見張っておいてね。と平然とした顔で言い放ち、今までの旅の中であった無茶の羅列を言い出す。 親友はこんな奴だった、と思い出してカインは頭痛に悩まされ、そのセシルの過去の羅列を聞いてあいつは馬鹿か。と同じようにエッジも頭を抱えるのであった。 前 戻 次 ×
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