ルドルフ | ナノ




カインが部屋に戻ると、心配そうな顔をした面々がカインを見ていた。四対の目を見て、そんなに心配なら様子を見ればいいのに。といいかけたが、あれに言っても聞く様子が想像できないな。と思って言葉を飲み込んだ。

「月までゆっくりさせてやれ。」
「いつもそう言ってるんだけれどね。」
「あれが、じっとしてるタマかっての。」

どこか野生を忘れない獣だと一番最初の会ったときのうすぼらけな記憶があった。ファブールで、セシルを殺そうとしていた時もあの銀色は、仲間をクリスタルを守るためにギラギラとした目をして、噛みつかん勢いで戦闘をしていた。

「あのお転婆はなんとかならんのか?」
「なるわけねえだろ。」

手合わせで傷だらけだってのに魔物の討伐が入ったら嬉々として出ていくんだから、化けモンだっての。付き合いの長いエッジが匙を投げるように呆れながら、肩をすくめる。武器を持たずに貴族のように微笑むサメラを想像してみたが、うまいこと想像できずに何度考えても曖昧に笑っているセシルにしかならず、考えるだけ無駄かとカインは思考することも諦めた。

「どうやったらあれだけ強くなれるんだろね。」
「一回手合わせしてみるか?」

俺でもあいつに一発運良ければ噛ませるんだけれどなー。やってみようぜ。時間はあるんだしよ。ニカリと笑って、エッジが別の部屋にと足を向けだす。それについてカインも歩きだす。動かないとからだがなまるぞ。とサメラに似せた声色で目をつり上げさせて二人を急かす。最年長であるエッジがこどものように笑って早く行こうぜ!とセシルに声をかけると、セシルは今いくよ。と返事だけして、ローザに話しかけた。

「リディアとローザはどうする?」
「サメラが起きて誰もいないと寂しいから、私たちここでお茶でもしておくわ。」

サメラが起きるはずないけれどよろしくね。ちょっと行ってくるよ。気を付けてね。軽いやり取りをしてローザはセシルを見送った。リディアはローザの向かいに腰を据えて、嬉しそうだね。と声をかける。ローザははにかんだように笑って、カップに茶を入れ始める。

「カインが戻ってきて嬉しいの。」
「戻ってきてから、セシルもローザもよく笑ってるよね。」

きっと、サメラが居なかったらこうしてみんなで笑ってることもないんだろうな。って思うと、すごくサメラには感謝をしてるの。セシルの家族でいてくれて。生きててくれてて。みんなを助けてくれて。感謝しきれないぐらい。私たち、みんなサメラに助けてもらってる。救ってもらってるな。ってすごく実感するの。そう思わない?

「確かにそうよね。封印の洞窟ですっごく思ったの。きっとサメラが居たらもっと楽に進めるのにな。って考えてしまったの。アサルトドアに対面して。」

きっと居たら、私たちの名前を読んで庇うようにたって、攻撃してるんだろうなっていうのが思い浮かんじゃう。それに、旅の途中でずっと気にしてくれてた。ホブス山でも、小さな私を気にしてくれていて、地底で会ったときも。軽装備の私たちを気にしてくれていた。すっごい自分に無頓着なのに私たちをずっと心配してて。

「サメラには幸せになってほしいな。って思うの」
「そうよね。」

でもね、サメラ。って私たちと会って変わってきたんだよ。私の小さな頃は眠るときもずっと眉間に皺を寄せてたけれど、最近皺がよってないの。私の横で寝るときだって、ここにすごくいたんだから!と眉間に指を添えながらリディアが言う話に、思い返してみる。
ゴルベーザの手によって離される前とミシディアで合流する頃を思い返してみると、確かに少々…。

「柔らかくなった?」
「そうなの。なにがあったんだろ?って、思うんだけれど。なんだろう?」
「うーん、サメラのお母さんの石を手にいれたから?」
「わからないけれど、なにがあったんだろうね」

全部おわったら、三人で話をしようよ。サメラならきっと答えてくれるよ。
そうして、女二人のお茶会はただゆっくりと時間が流れていく。



×