ルドルフ | ナノ



ルビカンテが肉弾戦を仕掛けてきたので、サメラがそれを捌く。すかさずそこに使役されたゾンビーたちが投入されて、サメラが大きな炎を起こして、一掃しようと文言を唱える。炎が出来上がると同時に津波が押し寄せる。起こしていた炎を、津波にぶつけながら、バックステップで距離を開けて、武器を持ち直して、近くのカイナッツォに切りかかる。切っ先からえぐるように食い込んで、カイナッツォの腕に武器がめり込む。その柄にサメラは足をかけて、刺さった武器を深くねじ込む。武器を足場にして空に飛んで、雷を起こそうといていた嵐を蹴り、ゆかに叩きつける。
サメラもボロボロであったが、ありったけの魔力をねじ込むかのように、呪文を唱えあげれば、バチバチと魔法の粒子たちがぶつかりおとをならす。

「フレア!!」

腹の中からずるりと魔法のちからが抜け落ちる感じがした。それを止めることもなく、サメラはむしろ追い出すかのように圧力をかけて魔力を流し込んでいくと、ばちばちとなっていた魔法たちから、熱が生まれて何もかもを焼くかのように巻き込んでいく。魔法は白い光となって、縦横無尽に走り、四天王たちを切り裂きはじめ、サメラは叫ぶように声を張り上げて武器を握る。「浄化の光よ、悪しき者すべてを無に帰せ、ホーリー!!」やいばを横に走らせると、同時に光は薄れそこには、サメラと赤い砂の入った瓶だけが残った。
なんともあっけない終わりだと、サメラが思った。炎でさえもすべてを消し去る白魔法の最上位の魔法は、すべてを燃やして消したのだった、生きている魔物を浄化して。地面に落ちている瓶を拾い上げた瞬間、声が聞こえて振り向くと、セシルたちがそこにいた。様子がおかしい、首をかしげるとどこかからドンと鈍い音がした。白い光が胸元から見えて赤が吹き出す。何で?と音を出すよりも燃えるように熱い痛みが生まれる。くらりと、見ているものが歪み、サメラはゆっくり座り込むとバタバタとサメラの隣にローザが駆け寄って回復魔法の冒頭を口ずさむ。

「なんだ、アレ!?デケェ!」

エッジの声に釣られて、サメラの視線が動いた。動かないで、とローザにいなされて見える端に漂う三つの黒が、強烈な印象を与えた。

「あれがバブイルの心臓じゃ。」
「あれを叩けば…巨人は止まるの?。」
「さよう、あれさえ止めれば。制御システム本体よりまず防衛システムを叩かねば回復されてしまうぞ!」

一番大きな玉を中心に、残りが周りを回る。どれがどのシステムかなんて解らないが、なんとなくの予測はついた。

「ローザ、サメラを頼む」
「えぇ、勿論!」
「…エーテルを飲んで、武器を拾ったら行く」
「解った」

前衛ほぼ僕しか居ないからサメラ速くね。と念を押して、セシルは飛び出していった。その背を見送りながら、サメラはポーションの瓶を一気に開けて魔力の気配を探る。


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