魔導船で、青き星の地上が辛うじて見える頃。ようやく見えてきたそれに、息を飲む音が聞こえた。焦土に化した大地に立つ小さな点として見える何かが件の巨人であろうか。 グッと手摺を掴み乗り出してその点を見ていたが、巨人の出す衝撃波によってか、魔導船は大きく揺れてその勢いに負けてサメラはバランスを崩し鎧の金具にさきほど譲り受けた武器が接触して甲高い音を鳴らした。 それに気づいてか、セシルやエッジが駆け寄るよりも早くに魔導線から投げ出された。 「げっ」 「サメラ!!」 その怒声が聞こえたのは一瞬で、慌ててセシルたちが顔を覗かせたが、それに反応するよりも速く魔導船が遠くに見える。地面はまだまだ遥か遠くで重力のままに落ちていく。足掛かりになるようなものがあれば、減速するきっかけにもなるのだが、生憎そんなものが手近には無く。ファブールの時は魔物を足場に昇り下りをしていたのだが、見渡す限りそこには魔物もまったくいない。 「ええええエアロォォオオ!!」 辛うじて発音ができふわりとした風のたまが一つ出来上がりそこにサメラがぶつかる。すると、その玉はソファーのようにぐっと沈んで比較的ゆっくりと降下していく。しっかりした足場であることを確認して、サメラは深く息をはいた。寿命が縮まったかと思った。と、独り言を吐き出して、下を見つめる。 かなり落下したらしく、魔導線が空の上に浮かんっでいるはずなのにその姿もうかがうことはできず、足元の巨人の方が距離的にも近く、巨人はその全貌が見えるようになっていて、バブイルの塔とにた大きさをしているそれに向かっていくのか、魔導船に戻るのかと、算段立てたかがどう考えても、下りる方が遥かに楽だし、恐らく、今と同じ要領で下りていけば問題ないだろうと判断して、サメラは別の小さな風を産み出して、風に伝言を言付ける。 無事だ。遥かしたに落ちたから、先にバブイルの巨人内部に潜入する、ついでに色々おいてきたものがあるのでそれも回収してくる。後で落ち合おう。 ふわりと、風は上に上にと上がっていく。見えなくなるまでそれを見送ってからサメラはいくか。と乗っていた風のたまをひとつ消した。風は花が散るようにほどけていき、サメラは一息はいてから、空に身を投げ出した。 三度四度粗っぽいことを繰り返して巨人の内部へと侵入は成功した。魔導船にもサメラの荷物の中にもポーションもエーテルも沢山置いてきてるので彼らはそれをもってやって来るだろう。備えあれば憂い無し。だ。 コウコウとなる機械を潰しながら、下に下に下る。魔導船にいたチョコボから受け取った武器を背負い、すっと通路をかけていく、二三宝箱もあったが、今ほしいのはそれではない。 サメラが求めているのは、賢者ティンクトゥラの残した意思だった砂とどこかに置いている武器や荷物である。だが、それもどこにあるのかサメラにはよく理解をしていない。つい先日までいたのだが、サメラの移動が許されていたのはひどく狭い範囲の中だ。大きな通路をひたすら下に下にと走っていくと、風がおきるはずのない場所で突風が吹いて、耳元で誰かがささやいた。 「銀色、お前がほしいのはこれだろ?」そう確かに聞こえた。びゅうびゅうと風が人の形をとって、瞬く間にそれは姿を変えて、ニヤリと笑った。金と銀を混ぜたようなキラキラした長い髪を振り回しながら、サメラの求めていた赤い砂の入った瓶をもって、風の女が現れた。 「返せ」 「我々を倒したらな」 風に煽られて炎が生まれた。その中から赤い魔人が陽炎のように揺らめきたった。土が、水が順番にうごめくように姿を表した。また、お前と戦えるとな。そう、水の魔物が笑った。お前たちに教えられた事を、今ここで。 炎が煌めくと同時に津波がやって来た、慌てて空に跳躍して逃げれば追撃と言わんばかりに風の塊が追いかけてくる。 四天王と、サメラ。 四体の魔物と最強とも言われたキャラバンの生き残りである先頭であり戦闘担当のサメラ。という、 対戦の火蓋が落ちて、鬨の声が響く。 前 戻 次 ×
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