ルドルフ | ナノ



リディアと二人で、魔導船を散策する。
細部に入り組んだ船は、様々な機能を持つ部屋が存在していた。
たとえば、睡眠するためのカプセルが集まった部屋、広い戦闘訓練が出来そうな道場。集まるための小さな部屋、鍵をかけてしまうと見えなくなってしまう部屋と、それから…

「デブチョコボだー!」

パタパタ駆け寄って、鉄色のチョコボに抱きつく。鉄色なだけで、魔法のお陰か肌触りは本物そっくりになっている。

「やぁ、久しぶりだね。出すかい?入れるかい?」
「…ここでも、受けとれるのか?」

サメラの言葉に首を傾げながら、なにのこと?とリディアは考えたが答えは浮かばずサメラを見つめる。視線を察してか、じゃあ今から言うものを出してくれ。と言う。


「何を出すの?」
「リディアは知らないか?」

チョコボの臭いが濃いところで、ギザールの野菜を使うとな、こんなチョコボが出てくるんだ。そのチョコボは荷物を出したり受けたりしてくれるのさ。ここでも受けてくれるから、装備を揃えようと思ってな。武具防具をたくさん拾っても、持てないだろ?とサメラが言えば、見に覚えがあったらしく、リディアはセシルは捨ててたよ?と告げる。

「…それは、アイツが旅慣れしてないからだ。」

覚えておくといい、旅には沢山の金子が要るんだ。町の近くでコイツを呼び出して荷物を預けたりするといい。お前に預けてる中で一番上等な武器と防具を一つずつ出してくれ。
そう言葉を出せば、「まったく君はチョコボ使いが荒いよ。」とグチグチ溢しながらも、鉄のチョコボはどこからともなく武器を出してサメラに渡す。サメラは刃渡りや振り心地を確認してから、「ありがとう。チョコボに会ったら飯をやっておくよ」「君のご飯は美味しいからね」「人間のモン食うからそうなるんだうが。」「手厳しいね」軽口を叩きあっているサメラと機械のチョコボのやりとりを見てると、サメラが笑っていることに気付く。
小さな頃に見ていたサメラは、苦しそうな顔ばかりしていた。昔からの気心知れた仲だからか見せている表情に、小さな寂しさを覚えた。

「どうした?リディア」
「ううん。なんでもない。」
「なんでもないっていう顔してないが?」

追求されて言い淀むリディアにサメラは詰めるようすもなく、ふっと息を吐き出して探検するんだろ?と誘導する。背中を押されたリディアはもう。と唇を尖らせて、サメラの先を歩く。ふと振り替えれば綺麗な笑顔のサメラがそこにいて、リディアの心が晴れた。


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