ルドルフ | ナノ



行きと同じように魔物を交わしながら戦いながらを繰り返して、魔導船に向かっていたのだが、完全に傷をサメラがセシルの許可によって参戦するようになったので、驚くほどのペースで先に先に進めるようになったために、行きよりも二日短縮して魔導船に乗り込むことができた。

ぼんやりと、魔導船にのってやることをなくしていたサメラは、窓の外を見ていた。きらきら煌めく星を見ていると、脳に語りかけてくるような甘い囁きを聞いた。一寸前まで仲間として動いていた竜騎士の声だ、と把握した瞬間、自分が闇に包まれていることに気づいた。

…ワレノ…

あの男の声が聞こえて、心臓が捕まれた気がした。背筋に冷たい汗が流れる。どこから見られているような気配がして、鳥肌がたった。甘い闇の声は、いまだに耳元で囁いて、自分の名前を呼べと求めろと声を出している。そうだ洗脳は、心の隙間に漬け込んで、隙間を埋めて染めていくと、団長がいっていたのを思い出した。
私には、家族がいるんだ。セシルと、未だ生きているかわからないセオドールが、家族に会えるまでは、と意識をしていると、肩を叩かれて、その衝撃で泡のようにぱちんと闇が消えた。闇の消えたそこで、セシルのかおが見えた。

「サメラ、今大丈夫?隣いいかな?」
「あぁ、大丈夫だ。」

ありがとう。といって、セシルはサメラの横に腰を下ろした。こうして、セシルと会話するのは、いつぶりだったかとか、思ったけれど、つい最近だったことを思い出して、そしてその内容が、一寸話したいことがあったけれど、まってて。とかそういう言いきったばかりなのを思い出して気分が滅入った。何を話せばよかったのだろうか、いろいろと考えたが、言い放しが出てこなくてどうしようと考えていると隣に、座って星を見ているセシルが口を開いた。

「僕が兄弟だって知ったときサメラはどう思った?」

正直、驚いた。いなくなった、ゴルベーザに殺された家族が、本当の家族がまさか、こんな近くにいるだなんて、信じられなかった。でも、同じ色の髪で、珍しい銀色で、同じ青をもってて、そうやって色だけでも、落ち着いて考えたら、繋がることも、なんだか嬉しくなって、なくなったはずなのにそこにあるのが、とても嬉しかった。ただ、こう旅をしていて、どうやって切り出すかずっと悩んでもいた。
実は兄弟でした!とかいきなり言われても、誰も信じないし、下手したら、冗談でしょ。で片付けたら私が、いたたまれなくて。どうしようとひたすら考えていた。フースーヤがいってくれて、安心もした。セシルはどう思っているんだ?

「僕は。」

陛下がすべてだった。陛下が拾ってくれて、家族は陛下だけだった。なのに、陛下は殺されてしまって、家族がいなくなって、サメラのお陰で会えたけれど、家族がなくなってしまって、寂しくなっていたんだけれど、今回こうやって家族が、隣にいたことは驚いたし、嬉しかったよ。兄弟がサメラでよかったって思ってる。ありがとう。生きてくれて、僕を見つけてくれて。家族だっていってくれて。ほんとうれしい。すごく嬉しいんだ。
顔は見てないけれど、その声色は酷く嬉しがっている。隣から伝わってくる喜びが、先程見ていた闇をすべて消していってくれる気がした。

「な、セシル。私に、なにかあったら、切り捨てろ。よ。」
「なにかとんでもないことがおきたらね。」
「そうしてくれ。」

ふっと息を吐き出して、暗い闇の中の星をぼんやり二人で見つめている。またたく星星は、ただ沈黙を保っていた。

「セシル。お前は何があっても進め。露払いはしてやる」
「サメラ、怒るよ」
「はいはい。わかったよ兄弟。」
「ほんと、ずるいよね、兄弟。」




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