「サメラさん、これ、頼まれてたものです。」 「エドワード、持ってくれ」 「おっもてー。何入ってんだよ?」 「見るなよ。企業秘密だ。」 「みなさん、ご無事で。」 「大丈夫だよ、こいつはくたばらん。特に、エドワード」 「おい!」 別れ話もそこそこに。旅支度をプロムからもらって、エッジの背を借りて魔導線に乗り込む。中は埃臭くなく、掃除したての太陽の匂いがした。もしかすると、この船には魔法の類があるのかもしれない。と頭の端によぎる。あの、赤い石があれば、母の記憶が見れたのかもしれない。とぼんやり思ったりした。たられば。の話だから、そんなに期待するものでもないか。と思った時、四天王の存在を思い出した。 あ。と小さな声を出して重大なことを思い出す。降ろされかけだったせいで、その音声を拾われてジトリ。とした目で睨まれて、どうはぐらかそうか、 「どうしたんだよ。ルドルフ」 「そろそろ飛ぶよ。」 そんな声と同時に、体に重力がかかる。飛空艇とかと比べると幾分か弱い気がする。窓の外を見ると、澄んだ空の青から、青い宝石を砕いてまぶして散らした空が見えた。瞬く間に変わった空の色を見て、幻想的な空間とともに、はて。とふと考える。どこかでみた景色なようで、首をかしげた。なにだったけ、と考えてる間に、エッジにより現実に引き戻される。 「…で、どうしたんだ?」 「いろいろと、話さないといけないことがある。持って得た情報がどれほど正確であるかはわからないことを念頭に、聞いていてほしい。」 バブイルの塔で。ゴルベーザの手下が…四天王の三人生き返っていた。ゴルベーザの背後に、もう一人いる様子がある。…下手すると、ルビカンテやマラコーダですら生き返っている可能性はある。 端的に伝えると、皆はみな一様に黙った。何を思っているのかはわからないけれど。困惑は目に見えてわかった。隣のものをちらりと盗み見て反応を見たり、それぞれに思うところはあるのだろう。サメラは気にせずそのまま言葉を続ける。 「もしも、四天王と出会った。その時は私が一手に引き受ける。お前たちはゴルベーザを討て。四天王から、逃げてきたのだ。処理の仕方はわかる。ついでに、探し物をしたい。それだけを探すために、地上に戻ったら、バブイルに侵入するときは。別行動を刺せてほしい。」 「でも・・・」 「でもはない。テラから譲り受けた、母の形見を忘れてきた。赤華の思い出である武器や防具を置いてきた。」 回収したいんだ。そう声を上げれば、ローザは仕方なさそうな表情を浮かべている。言外にお前たちは関係ない。そう、サメラは言っているのだから。 「怪我が治ってたらね。」 「…治ってたら、いいんだな?」 言質とったぞ。と言って、荷物を広げ、薬研堀と薬車を取り出して、薬を刻む。どうせやることもないのだ。いいだろ。と言って部屋の隅で淡々とポーションやエーテルを作り出していく。単調なリズムを刻むそれを見ながらエッジは、先見していたのかと疑いつつ、だから重たかったのかと、一人納得し、サメラの作業を眺めていた。ごりごりと音を立てて、しばらくすれば薬研堀にたまった上澄みを救い、サメラはぺろりとそれをなめる。 ふむ、と頷いて息を吐いてからそれを飲み干す。独特の草の匂いに顔を顰めながら鼻から匂いを追い出した。 「飲み終わったの?」 「まぁ。なぁ。今日の分は」 「怪我のほうも、だいぶ良くなったね」 「ほんとおめえのそういうの人間じゃねーよな」 「その人間じゃないやつに師事を乞うているのは誰だ?エドワード」 「おめーなんてセンセーじゃねえし!」 ほぅ。未だに一撃も与えれていないのは、どこのどいつだったかな?とにやり笑う。それに火が付いたのか、エッジは怒り掴もうとしたがリディアに諌められて動きを止めた。 「サメラも煽らないの!」 「わかってるんだがな。」 なんだか、いままでと様子が違うから何とかしようとしたんだが。逆効果だったな。すまん。とサメラは都合が悪そうに笑った。 前 戻 次 ×
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