ルドルフ | ナノ


宿屋は町の外れにあった。部屋割は男女別で采配がとられていた。道中で、プロムに興味を持ったリディアがいろいろ聞いた。三つ子というほうに興味がわいているらしく、いろんなことを根ほり葉ほり聞いている。ちょっと、プロムが嫌な顔をしているがリディアはうんうん。と聞いている。話すことに疲れたのか、マントを深くまき直し口を押えた。リディアは不満そうに唇を尖らしたがプロムは対応するわけでもなく、まっすぐ宿屋に押し込んで、ロビーにはいるので。夕食はあと鐘が2つなったら時間です。とだけ伝えてさっさと去っていた。その背を見送って、四人が顔を見合わせる。

「確実に明日はゆっくりできるね。」

明後日は旅支度を昼までに済ませれば問題ないだろうと算段立てて、最低限の予定を立ててから部屋を分かれる。部屋に入った瞬間、エッジが窓際のベットもらい!とベットに飛んでった。太陽に充てられていた寝具はいい匂いがしそうだと思いつつ、荷物を部屋の隅に置いて、ねぇ、と踏み出して聞いてみる。きっと彼女も語らないことを。

さっきのプロムの話に出ていたマラコーダって、覚えてるかい?その、マラコーダが実はサメラのキャラバンの団長だったんだ。その目的も、サメラを戦闘力として迎えいるためだった。マラコーダは歴の長いゴルベーザの手下だったんだ。

「嘘、だろ…。あの戦闘集団だぜ?…あー…納得できるかも」

ルドルフでも勝てなかったもんな。にしても、あれがなぁ。ゴルベーザの野郎…。親父とお袋までならず。あいつら…。
ぐっと唇を噛みしめて、居なくなった面々について思う。自分の親の姿と、##name_1##の育て親の姿がダブって映る。あれが親だったというこの事実を師はどう考えているのだろうか。

「早く目を覚ませって―の」
「まぁ、怪我人だから。そんなに早くは起きないよ。」

ただでさえ、ケアルが聞かないからもしかしたら起きるのも月から帰ってきてからじゃないかな。まぁ、月から帰ってくるのもだいぶ先になりそうだけれど。ため息交じりで吐き出せば、あれは簡単に死ぬタマじゃねえよ。とエッジが笑った。

「昔さ。アイツ、崖から飛び降りたんだよ」

知り合ってすぐ位の時に親父さんとルドルフとよ。手合せした時にうっかりルドルフをブッ飛ばしたんだよ。慌てて二人で崖を降りたらよ。あいつ、傷一つなくてケロッとして、遅かったな。っていうんだぜ。そんなやつが簡単にくたばってたまるかっての。
ふてくされた言い方で、ふちに腰かけて、あれやこれやと思い出話を口に出す。
拾われてきた当時は真冬でも水を使って身を清めて熱を出した。キャラバンの面々に怒鳴られた。薬を作ったが毒薬だった。ふらっと出て行ったら傷だらけで帰ってきた。武器も持たずいい品質の薬草を取りに魔物の巣を歩いていた。魔法も使えないのに魔法の勉強をしてアイテムを使い魔法ごっこをした。転じて忍術ごっこもしていた。淡々と出てくる話にセシルは相槌を打って聞いていた。
付き合いの短い無表情の仲間は、今のエッジの話を聞いている限りどうも大きくなってから落ち着きいているらしい。いや、前後の間がいろいろすっぽ抜けているらしい。どうも、拾われたころは何にも無関心で言われたことを淡々とこなしていた。だけの、まるで…。

「生ける屍。」

リビングデット。
死んで生き返ったような、どこか虚ろでその当時は生きる器だと。言っていた気がする。伝説のようなそれはゾンビ―とは違うのかと幼心で思ったが、まぁ、そんな伝説みたいなものと##name_1##は生きているか死んでいるかで大きく違う。もしかすると、心が死んだ状態だったという話を聞いたが。なんだかなぁ。とも思う。彼女の状態を知らないからなのかもしれないな。とセシルは思った。

「昔はそうだったらしいぜ。…飼われていた。とも言ってたからな。」
「それは聞いたことあるけれど。」
「ま、今生きてるからいいんじゃね?」

そうだね。ちょっとお茶もらってくるけれど。いる?頼む。と返事を聞いて、セシルは部屋から出て、ぼんやり歩きながら祈りの館まで戻る。##name_1##がどうなっているのか気になったのだった。宿屋のロビーに下りると、プロムが居て此方に気づいてかパタパタと寄ってくる。

「なにかありましたか?」
「##name_1##が気になってね。」

そういうと、プロムは一瞬だけ悩んだ顔をしてから、お近くまでは案内できますが、入室は難しいと。それでもいかれますか?とセシルに問いかけた。きっと入室拒否がまだされているのだろう。おそらく、目を覚ますまでは外部と接触すらさせないつもりであろう。それでもいい、少し考える時間がほしかっただけだから問題はない。連れて行って。と言えば、プロムは承諾して、宿屋の主人に伝えてから二人は外へ歩き出した。



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