ルドルフ | ナノ


屈強な赤の魔人が膝をついた。赤を吐きながら、ふとおもったのはバルバシリアの優しさ。であった、彼らは、どうも人間臭い。と今思った、どうして彼らを思い出したのかはよくわからないけれど、いつか倒さねばならないんだな。とおもうと、なぜだか妙な淋しさを得る。ふと、母の赤い砂をもってくるのを忘れて、頭の中が真っ白になった。いや、回収しに戻らねば。とも判断した。

「お前たちの強さがよく解った。」

ゴルベーザ様が手を焼くわけだ。と、その魔人はぐずりと溶けて塔の下へと落ちて行った。一瞬ちらりと見た四天王であったが、その最後は武人としては誇らしい最後だった。魔物だが。落ちて行った先を見て、スカルミリョーネを思い出した。…こっちにくるんじゃないか。ともおもったが、その前に上ってきた穴があったのを思い出した。じゃあ、まだ上に来たこともばれないだろう。でも、急がなければ。ほかの四天王は生きているのだから。踵を返して、急ごう。と声をかけた瞬間、風を感じた。
目の前を刃物が走った。かすったのか額から血が出た。眼前に白髪の男がニヤッと笑って立っていた。

「サメラ!?エッジ!?」

離れたローザの声が聞こえた。その声にこたえず、サメラはしゃがみ眼前の男のバランスを崩すために足払いをかける。それに気が付いてか、相手もすぐにはねて距離を開ける。足払いをかけた足をすぐに地面につけて、駆ける。

「火遁!」
「遅い!!」

地面を蹴り懐に飛び込み、腰のあまりの武器を奪い首に突き付ける。後ろでセシルやリディアが制止を求める声を聞いたが。もう決着はついた。

「日々の鍛練は怠るな。と言ったはずだが?」
「毎日やってるっつーの。またオメェ強くなってねーか?」

そんなことあるか。ここ何日かは寝込んでいたぞ。なんていうと、げっ。と聞こえた。奪い取った武器を投げ渡して、呆れたようにため息をつくと、声がかかってくる。

「サメラ、エッジと知り合いだったの?」
「エブラーナによったときになつかれた。村の子だろう。」
「…サメラ?エッジはエブラーナの王子様よ?」

…その王子様は、したり顔でこちらを向いてる。したり顔が、ちょっと腹が立ったので、横っ腹を殴って何事もない振りをして、セシルを見た。くすくす笑ってこっちを見ていた。そんな中、ドタドタと足音が鳴って、通路から人がなだれ込んできた。服装を見ると、エブラーナの武人だとすぐに判断は取れた。走ってきたようで息を切らした老人が、エッジに問いかけている。

「若、わしらも戦いますじゃ!きゃつは!ルビカンテはいずこに!?」
「おう、遅かったな!こいつらと一緒にルビカンテを倒したぜ!」
「おぉ、さすがは若!素晴らしき仲間をお持ちになられましたな!」
「ところでさ、ルドルフ。いったい、ルビカンテのいってたゴルベーザってのはなにモンだ?」

…一瞬。こいつ、本当に王子かと思ったのだが、今の一言がなければよかったものを。と思いつつ、肩を落とした。そういえば、こいつ馬鹿だった。顔がひきつったのを察知してか、隣の竜騎士の肩が震えている。あいつ、あとで説教だと心に決めると、セシルが口を開いて簡単な説明を行った。

「俺たちがゴルベーザをぶちのめすから、しばらく留守を任せるぞ!」
「くれぐれもお気をつけて…!」

こいつ、本当に連れて行って大丈夫なんだろうか、とサメラは一抹の不安を感じていると、リディアがサメラの横に立って、エッジとサメラも似てるよね。と笑いを含んでいる表情をみると、やっぱり不安になったのであった。エブラーナの民を追い返して、さて。と話を切り出した。
こちらも、いろいろ話があるんだがおちついてから。だな…とりあえず最善も目標をこなそう。塔内に警報が鳴ってセシルたちが乗り込んできているのもゴルベーザたちは気が付いてる。急ごう。と促して、ぞろぞろと歩き出す。目的地は?と聞けば、地上のクリスタルルームだという彼らとともにサメラは歩き出した。武器も何も持ってないサメラが必然的にどこにでも対応が取れる中央に位置した。先頭に立つには武器もなく、後ろに立つにも対応がとりにくいと思い、誰にも言わずに歩き出した。

「ね。サメラ 、体調は大丈夫?」
「まぁ、寝てたら治った。魔法の使い過ぎだったんだろう。」
「無理はしないでね。」

わかっている。と軽く答えると、何か声が聞こえたような気がする。けれど、すぐに消えた。なんだったんだろう。とおもいつつ、歩を進め、目標のクリスタルルームまではもう少し。



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