ルドルフ | ナノ



そんなこんながあって、ドワーフの城から北西に少し歩くと、遠くに塔が見えてきて、ヤンが感嘆を上げる。先頭を歩くサメラが、その塔を指差して口を開いた。

「あの塔は地上に繋がっている。エブラーナの西に見える大きな塔だ。」

最悪、塔に登って状況が悪かったら地上に出てエブラーナで支度を整え直すのも一つの手だ。力が足りないならエブラーナから忍びの力を借りればいい。アレも手を貸してくれるさ。
…また背が伸びたんだろうなぁとぼんやり思い馳せると、青が視界に入った。視界の先の男はぼんやりと塔を眺めていた。サメラはそれに気をつける事も無げに、視線を進行方向に移して、息つく。

「……ん。」

ぐらりと地面が割れた。離れろ!と声を荒げると、敵襲だと気付き、一同は散会する。サメラの足元が裂けて、赤い海が吹き出した。その中から堅い甲羅を持つ魔物が現れ、赤い熱の塊を飛ばした。その塊はサメラの頭上から降り落ち、捌ききれずに二三それを被る。

「ぐぅ…」

ジュッと音がして肉の焼ける臭いと痛みが襲った。サメラは痛みに迷うことなく、

「ブリザド…!」

応急処置のために、氷を呼び出し患部にあてて、荷物から紐を取り出し氷を縛る。ローザがケアルをかけようとしていたのを離れて、片手に魔法を集め、風を放つ。

「サメラ、大丈夫?」
「後で対応する。」

赤い海には気をつけろ!と怒声を上げて、サメラは駆けて、魔物の腕に氷を作り足場を確保した。そこを竜騎士が駆け上がり空を行く。高さがついた所で槍を構え重力に従い落ちてきて、仕留めた。
「みんな、怪我はないかい?」と聞きつつセシルの目が、サメラの負傷した腕を見つめていた。

「…火傷だ。冷やしてるし、もう問題ない。」
「サメラ、」

きみは女の子だからと。言うとセシルとサメラは睨み合う。

「…私は傷だらけだ。これよりも増えようが減ろうが大差はない」
「それでもだ。せめて薬は塗ってくれ」
「…あとでつくる」

それだけ言うとサメラはバブイルに向かう。その背を見つめてリディアはセシルに寄る。

「セシル。サメラから目を離さないで。」

サメラ、きっと一人だと。もっとずっと傷だらけで歩いていくよ。そう言うリディアにセシルは、目を伏せながら、力なく3うだね。と言うしかなかった。


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